はじめに
経営工学に関連したキーワードを学習していて気付いたことがあります。
「多面的な視点が養われ、汎用性がめちゃ高い!」
「技術士二次試験の経営工学部門に限らず、多くの部門に応用可能な知識や方法論が満載!」
ということで、技術士二次試験(経営工学部門)の対策をしている時にまとめてきたキーワード集をほとんどそのままご紹介!
本経営工学キーワードシリーズの記事の特徴として、ある1つのキーワードをについて
- キーワード名
- キーワードを取り巻く背景
- 原理と特徴
- 問題点
- 解決策
- 応用例
- 今後の展望
これらのような、あるいはこれらに近い視点でまとめています。
これはそのまま、技術士二次試験対策に直結するまとめ方です。
このシリーズの記事は次のような方にオススメです!
- 技術士二次試験(経営工学部門)受験予定の方
- 技術士二次試験(経営工学部門以外)の受験予定の方
- 技術士に興味はないけど、経営工学を勉強したい方
ぜひ、それぞれの目的に合わせて勉強にもお役立てください!
キーワード名
販売チャネル(実店舗販売とオンライン販売)のオムニチャネル化
〇そもそも、チャネルとは
チャネルとは、辞書によれば英語の「channel(チャンネル)」のこと。
主に経路、伝送路、周波数帯域、水路、溝、道筋、手段などの意味がある。
日本語では「チャンネル」と呼びますが、通信やITの分野では、チャネルと呼ぶ。
ビジネスの分野では、市場をものやお金が流れる経路や手段などを表します。
特に最近、販売、マーケティング、広告の分野で、顧客へのアプローチ手段を表す用語としてよく使われている。
〇マーケティングチャネルの種類(3つ)
- 販売チャネル
- 流通チャネル
- コミュニケーションチャネル
販売するための経路。
販売方法や、消費者が商品やサービスを購入する場所を指す。
例えば、店舗・代理店・テレビショッピング・新聞・マスメディア・ECサイト・SNS・アフィリエイト(ASP)など。
流通チャネルは、流通手段のことを指す。
商品が販売する側のもとから、購入する側に届くすまでの流通ルートにおけるあらゆる手段のこと。
具体的には、流通(配送・運輸業)業者、卸売業者、小売業者が流通チャネルに該当。
コミュニケーションチャネルとは情報伝達経路のこと。
つまり、企業が顧客とコミュニケーションをとるための場所や方法。
具体的には、メールやSNS、アプリ、ダイレクトメール、テレビCM、webサイト、web広告、電話など多岐に渡る。
〇”オムニ”とは
オムニ(omni)とはラテン語が語源で「あらゆる、すべての」の意味。
〇オムニチャネルとは
オムニチャネルとは、顧客との接点となる”チャネルを複数”用意して、それらを”連携”させることで、顧客の利便性を高め、顧客満足度向上につなげるもの。
例えば、ECサイトで購入した商品を、できるだけ早く受け取りたい顧客のニーズに応えるために、最寄りの店舗で受け取ることができるサービスの提供などが該当する。
オムニチャネルの留意点と特徴
先ほどの例は、ECサイトと店舗という「2つの販売チャネルを連携」させているからこそできること。
顧客が都合に応じて複数の販売チャネルを行き来することができるようにすることが、販売チャネル戦略を構築する際に欠かせない重要なポイント。
販売チャネル戦略の手順
- 調査
- プロモーション
- 接触
- 交渉
- 適合・マッチング
- 物流
- コスト・金融
販売したい商品やサービスに関する調査を行う。
商品やサービスに対するイメージ・意見・ニーズ、顧客のターゲット層に対してアンケートやヒアリングを行い情報収集を実施。
広告やPR活動を通して販売促進を行う。
ここでのプロモーションは販売チャネルにおけるプロモーションのため、小売業者や中間業者と一緒にプロモーション活動を建都数ル必要がある。
見込み客や顧客に対してどのように接触するかを検討する。
販売チャネルによって適した接触の仕方が変わってくる。
例えば、シニア層がターゲットであれば、信頼感を得るためにメールよりはDMの方が適する可能性が高い。
広告を打つにしても、SNS、テレビCM、新聞などどれが最適か検討する。
小売業者や卸売業者などと、価格・取引条件・保証等について交渉を行い最終合意をとっていく。
販売チャネルを効果的に機能させるために、関係業者とスムーズな連携を図る。
販売チャネルは顧客のニーズに細かく即した場でなくてはならない。
顧客の購買意欲が高まるように、かつ購買行動がしやすいように調整する必要がある。
これを実現するためには、関連業者とのすり合わせが必要な場面もある。
よりターゲット層にマッチした販売チャネルの実現が重要。
商品を販売する前檀家において、どのように輸送し、どのように保管するか、商品を顧客の手元に届けるまでの配送手段について検討する。
流通チャネルに関係するが、販売チャネル戦略においても欠かせない項目。
流通チャネルに関連するが、流通にかかるコストを管理する。
最適な資金の確保と配分を決定する。
4)オムニチャネル化の実例(4つ)
①大手衣料品店
某大手衣料品店は実店舗とECサイトでの販売に強みを持つ。
このブランドは複数の販売チャネルを持つ中で、コミュニケーションチャネルとしてアプリの開発も行っている。
アプリの特徴として、購入者の情報を入力することで、購入履歴及び顧客にオススメの商品を紹介する機能がある。
欲しい商品が近隣店舗にない場合、店舗へ出向くことが無駄足になり顧客の利便性を低下させるため、実店舗とオンラインショップの在庫情報も確認できる機能を付与している。
これにより顧客の利便性と満足度が向上し、より実店舗とオンラインショップの販売促進につながっている。
また、このブランドは多様な場所に店舗を展開するばかりでなく、自動販売機での衣料品の販売も手掛けており、各店舗の顧客のニーズに即した販売チャネル戦略を行っている。
②大手化粧品メーカー
ある大手化粧品メーカーでは、実店舗でコスメカウンターを持ち、メイクアップアドバイザーが顧客に対しメイクや商品に関する知識や情報を手取り足取り教えてくれる。
そうした実店舗を持つ一方で、Web上で美容情報満載のオンラインショップを展開している。
通常、実店舗とオンラインショップの2つで展開するのが化粧品業界では一般的。
その中でもこのメーカーは、美容情報が膨大という特徴がある。
この狙いは、
- コスメカウンターには抵抗がある人
- コスメカウンターに出向く時間がない人
- 新型コロナウイルス感染対策のための密防止
などがある。
販売チャネルを複数持つ意味は企業によって異なる。
このメーカーの場合、化粧品という特性上、商品の使い方や継続する必要性などを啓蒙も必要になる。
ただ商品を売って終わりというわけではなく、コスメカウンターの代わりに、より多くの情報が得られるWeb上の情報提供の果たす役割が大きい。
こうした2つの販売チャネル兼コミュニケーションチャネルを持つことで、メーカー側が顧客に提供したい情報を伝えれられるばかりでなく、顧客の利便性と満足度を同時に高められる好例と言える。
③大手スーパーマーケット
ある大手スーパーマーケットでは実店舗とオンラインショップの2つの販売チャネルをうまく連携させ販売促進を成功させている。
ターゲット層は、店舗で買い物をしたい思いも、自宅でオンラインショッピングも楽しみたいと思っている消費者。
商品が食料品などのデイリー品が多いことも背景にある。
実店舗にタブレット端末を多き、顧客が店舗に取扱いのない商品についてタブレット端末で注文できるようにしている。
顧客が持っているスマホからでもオンラインショップを利用できるが、店舗にタブレット端末を置くことで、顧客に実店舗とオンラインショップが連携していることを植え付ける狙いがある。
また、独自とポイント制度により十店舗とオンラインショップ共通で貯めて、使える仕組みも構築している。
また、コミュニケーションチャネルとして、スマホアプリも開発している。
実店舗とオンラインショップを結び付けるばかりでなく、商品POPやチラシをアプリで読み込み、商品を使ったレシピ紹介などのサービスも展開。
顧客のライフスタイルにマッチした仕組みを届けている成功事例と言える。
④大手コンビニエンスストア
大手コンビニは大手スーパーと同様、実店舗とオンラインショップをともに運営するケースが多い。
オンラインショップで注文した商品を自宅近くのコンビニやスーパーで受け取れるサービスにより顧客の利便性を高め、売り上げを上げている。
また、スマホアプリにより
- オンラインショッピングを楽しめる
- 独自のポイントを貯められる
- 実店舗とオンラインショップ共通で使える
などにより販売促進と共に、顧客の囲い込みにも成功。
この事例も、顧客のニーズを第一に考え、顧客のニーズにより的確に応えている好例と言える。
オムニチャネルの将来性
〇成功例から見えてくること
Amazonのような驚異的な企業がある中でオムニチャネル化を進める企業はどう対抗し、独自のビジネスを展開していくべきなのだろうか。
Adobe Systemsにて小売り及び旅行・観光業界戦略担当ディレクターを務めるマイケル・クライン氏が注目する3つのトレンドと、
オイシックスの奥谷氏が語る顧客起点への営業変革としてのオムニチャネル(「店舗を軸に顧客の管理を行う」のではなく「顧客を軸にチャネルの管理を行う」)について説明する。
〇Adobe Systemsのマイケル・クライン氏の3つのトレンド
①小売り体験の再設計
②顧客体験の最適化
③パーソナライゼーションの拡大
店舗を閉じたニュースはネガティブな印象で捉えられがちだが、店舗を閉じた分で得た資金をリテーラーは魅力的なショッピング体験を再構築するための投資に振り向けている。
買い物をする場所としての実店舗の果たす役割は依然として大きい。
デジタルと実店舗をシームレスにつなぐ顧客体験は、小売業にとって最先端のテーマ。
Boston Consulting Groupの調査結果によれば、パーソナライゼーションに投資を行うと収益の増加が6~10%、成長速度が2~3倍、8000億ドルの売り上げ転換という成果が出ているという。
顧客体験の優れた企業を消費者は支持する。
〇オイシックスの奥谷氏の顧客起点への営業変革
顧客を軸にチャネルを統制するのであれば、来店前の情報や購入後の接点も含めて考える必要がある。
店舗はもはや顧客の買い物における1つの通過点に過ぎない。
顧客の選択に影響を与える、店舗・アプリ・商品・メディア・SNS、その全てが情報であり、チャネルであると考えなくてはならない。
顧客の買い物行動を軸として、これらのチャネルを配置・連動させるという視点である。
顧客を軸とするならば、売上とは全顧客売上の総和になる。
つまり、極論すれば店舗ではなく「個客」の売上を追求することがKPI(重要業績評価指標)となる。
重要なのは平均としての顧客単価ではなく、「顧客は誰なのか」「なぜ来店したのか」「何を購入しどう使っているのか」の把握である。
それが分からないと顧客当たりの売上を上げるための策が見いだせ単に売上を顧客数で割った結果だけでは、アマゾンが着々と進めているような「個客」に対する提案には直結しないない。
〇さいごに
これら2者の考えのように、オムニチャネルの将来として、Amazonという大きな壁が立ちはだかる中で、小売企業はいかに顧客との親密なコミュニケーションを実現させ、より柔軟に顧客体験を提供するかが重要になってくるだろう
参考
- MarkeTRUNK
コメント