【経営工学キーワード】モーダルシフト

経営工学
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はじめに

経営工学に関連したキーワードを学習していて気付いたことがあります。

「多面的な視点が養われ、汎用性がめちゃ高い!」
「技術士二次試験の経営工学部門に限らず、多くの部門に応用可能な知識や方法論が満載!」

ということで、技術士二次試験(経営工学部門)の対策をしている時にまとめてきたキーワード集をほとんどそのままご紹介!
本経営工学キーワードシリーズの記事の特徴として、ある1つのキーワードをについて

  1. キーワード名
  2. キーワードを取り巻く背景
  3. 原理と特徴
  4. 問題点
  5. 解決策
  6. 応用例
  7. 今後の展望

これらのような、あるいはこれらに近い視点でまとめています。
これはそのまま、技術士二次試験対策に直結するまとめ方です。

このシリーズの記事は次のような方にオススメです!

  • 技術士二次試験(経営工学部門)受験予定の方
  • 技術士二次試験(経営工学部門以外)の受験予定の方
  • 技術士に興味はないけど、経営工学を勉強したい方

ぜひ、それぞれの目的に合わせて勉強にもお役立てください!

キーワード名

モーダルシフト

定義・背景

〇定義
モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶などに転換すること。

〇背景
現在では、環境負荷の低減は多くの企業で社会的責任(CSR)と位置付けらいる。
CSRは商品の生産から廃棄にいたるあらゆる場面で取り組まれている。
その中で輸送(物流)における環境負荷の低減にはモーダルシフトや輸配送の共同化、輸送網の集約等の物流効率化が有効。
特に「モーダルシフト」は環境負荷の低減効果が大きい取り組みといえる。

また、昨今では労働力不足の解消・働き方改革という観点からも注目されている。
モーダルシフトを行わない場合、倉庫間や集配拠点間の輸送など、幹線輸送となる部分について数百kmの距離を運転するため、出発した拠点に戻ってくるまで数日かかってしまう場合も少なくない。

しかし、モーダルシフトを行えば最寄りの転換拠点となる箇所まで、もしくは最寄りの転換拠点からの運転だけで済むため、効率的な業務を行うことができる。
こうした社会情勢も反映し、これまでモーダルシフトはおおむね500km以上の長距離輸送でないと難しいと考えられていたが、最近では300km~400kmといった比較的短い距離でのモーダルシフトの例も増えてきている。

つまり、目的を整理すると、

〇モーダルシフトの主な目的

  • 温室効果ガス(CO2)の排出削減
  • 流通業務の省力化や効率化
  • ドライバー不足への対策

の3点が挙げられる。

〇なぜモーダルシフトが低環境負荷なのか
輸送量当たりのCO2排出量に注目する。
1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロ)ときに排出されるCO2の量を比較してみる。

  • トラック(営業用貨物車):225g
  • 鉄道は18g(トラックの約1/13)
  • 船舶は41g(トラックの約1/5)

となっている(2019年度の調査結果)。

つまり、貨物輸送の方法を転換することで、鉄道利用では92%、船舶利用なら82%もCO2排出量を削減することができる。
こうしたことから、地球温暖化対策としてモーダルシフトは大変有効。

モーダルシフトの特徴(メリット・デメリット)

〇メリット

  • CO2の排出量を削減できる
  • ドライバー不足が解消される
  • 一度に大量の荷物を輸送できるようになる
  • 輸送距離が長いほど、大きなコスト削減を見込める

〇デメリット

  • 輸送にかかる時間が長引く
  • 港や駅での積み替えが発生する
  • 鉄道のダイヤや天候によって、輸送が遅れる可能性がある
  • 急な出荷増減への対応が難しい
  • 導入にあたって「倉庫費用」など、新たな経費項目が必要になる
  • コンテナサイズに合わせた荷づくりに手間がかかる

以上のように、モーダルシフトには環境負荷低減やドライバー不足などといった問題解決につながる一方、デメリットも多く存在する。

このような状況を踏まえると、特に中小企業がすぐさまモーダルシフトを導入することは難しい。
政府による支援はあるものの、補助金などの支援を受けられる企業は限られているため、全国的にモーダルシフトが導入していくためには様々な施策を講じる必要がある。

モーダルシフトの支援策

【モーダルシフトを推進する支援策の利用】
国土交通省はさまざまな角度からモーダルシフトを推進している。
モーダルシフトを導入しようとする企業にとっては積極的に利用を検討するべきと言える。

〇物流総合効率化法による支援
 物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)とは、流通業務の効率化を図る事業に対する計画の認定や、支援措置などについて定めた法律。
 この法律の適用を受けた企業は、以下の支援策を利用できるようになる。

  • 法人税や固定資産税、都市計画税の減免(※営業倉庫が対象)
  • 市街化調整区域に物流施設を建設する場合に、開発許可の面が配慮される
  • モーダルシフトに関する計画策定経費や運行経費の補助

ただし、2020年度分については募集が終了。
二次・三次募集などの最新情報の収集には注意が必要。

〇グリーン物流パートナーシップ会議の開催
グリーン物流パートナーシップ会議とは、物流企業の連携や排出量削減などを支援するための会議。
企業・団体・個人のいずれも参加することができ、参加者は以下のようなメリットを得られる。

  • 事業者間の連携を深められる
  • モーダルシフトの成功事例を学べる
  • 優良事業者に該当すると、表彰を受けられる

事前の申し込みは必要になるものの、高い参加費用などが発生することはない。
知識づけの場として最適なので、物流業界の最新事情などを手っ取り早く身につけたい経営者は、参加を検討してみるのも良い。

適用例

下記のような成功事例を細かくチェックして改善点や修正点、成功につながる工夫などを見出していくことが重要。
下記の3例は、国土交通省に表彰された3つの事例と、モーダルシフトを成功させるポイントについて解説する。

事例1)鉄道とタクシーの組み合わせによる貨客混載輸送
モーダルシフトの分かりやすい事例の1つと言える。
フェリーや旅客機をはじめ、すでに貨客混載に利用されている乗り物はいくつかあるが、以下の3社は「鉄道とタクシー」というユニークな組み合わせを日本で初めて実践した。

  • 佐川急便株式会社
  • 北海道旅客鉄道株式会社
  • 天塩ハイヤー株式会社

具体的には、北海道稚内市から幌延町までは旅客列車に貨物を積み、幌延町からは天塩ハイヤーのタクシーを活用することで、大幅な環境負荷の低減を実現している。
また、佐川急便のトラックドライバーの労働時間・労働環境が劇的に改善された点も、この事例ではポイント。

このように、複数の企業が協力する形でモーダルシフトに取り組めば、各社の経営資源を相互に活用できる。
つまり、導入コストを抑えながらメリットを得られる形になるので、自社と他社の経営資源を組み合わせる方法は積極的に検討したい。

事例2)連結トラックを利用した共同輸送による物流効率化
モーダルシフトと言えば、一般的にはトラックから鉄道・船舶への転換を指すが、トラックの機能性をそのまま活かした事例。
例えば、以下の4社は25mのダブル連結トラックを利用することで、環境負荷の低減や物流の効率化を実現した。

  • ヤマト運輸株式会社
  • 西濃運輸株式会社
  • 日本通運株式会社
  • 日本郵便株式会社

この事例では、連結トラックによる共同輸送を行ったことで、トラックドライバー1人あたりの輸送力が2倍になった。
さらに、車両ごとの共同輸送を行うことにより、さまざまな種類の貨物を組み合わせてロスなく運べるシステムが構築されている。

この事例のように、既存のトラックに工夫をとり入れる方法でも物流の効率化は実現できるため、モーダルシフトの計画は広い視野で考えることが大切。

事例3)働き方改革による店舗配送の強靭化
少し違った角度から物流の効率化を狙った事例。
以下で挙げる企業は、3つの標準化と2つの平準化を進めることで、物流における全体的な働き方改革を実現した。

  • 日本マクドナルド株式会社
  • HAVIサプライチェーンソリューションズ・ジャパン合同会社
  • 株式会社富士エコー

〇3つの標準化

  • 納品スケジュールの最適化
  • かご車での納品率を100%に
  • 納品定義の再定義

〇2つの平準化

  • 1日の時間帯別物量波動
  • 週における物量波動

この事例では物流システムそのものを大きく変えたわけではない。
物流事業を取り巻く環境を変えることで、トラックの走行距離を大幅に減らすことに成功した。

厳密に言えばモーダルシフトには該当しないかもしれないが、業務効率化やコスト削減などを目的にしているのであれば、働き方改革も物流マネジメントにおける効果的な施策となり得る。
工夫次第では、コストを抑えた形で物流システム全体を効率化できるので、「モーダルシフトに取り組む資金がない…」と悩んでいる経営者は、この事例のような施策も検討するのも良い。

今後の展望|モーダルシフトの計画を立てる際には、「他社との共存」の意識が大切

モーダルシフトをスムーズに実現するには、現時点では「他社との協力」が必須になる。
そのため、特に資金力が限られている中小企業は単独ではなく、他社の経営資源を活かす形でのモーダルシフトを計画が重要。

お互いにメリットが発生する形であれば、協力企業を探すハードルもぐっと下がるので、他社との共存を意識しながらモーダルシフトについて考えていくことが肝要となる。

参考

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