【経営工学キーワード】SCM(サプライチェーンマネジメント)

経営工学
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はじめに

経営工学に関連したキーワードを学習していて気付いたことがあります。

「多面的な視点が養われ、汎用性がめちゃ高い!」
「技術士二次試験の経営工学部門に限らず、多くの部門に応用可能な知識や方法論が満載!」

ということで、技術士二次試験(経営工学部門)の対策をしている時にまとめてきたキーワード集をほとんどそのままご紹介!
本経営工学キーワードシリーズの記事の特徴として、ある1つのキーワードをについて

  1. キーワード名
  2. キーワードを取り巻く背景
  3. 原理と特徴
  4. 問題点
  5. 解決策
  6. 応用例
  7. 今後の展望

これらのような、あるいはこれらに近い視点でまとめています。
これはそのまま、技術士二次試験対策に直結するまとめ方です。

このシリーズの記事は次のような方にオススメです!

  • 技術士二次試験(経営工学部門)受験予定の方
  • 技術士二次試験(経営工学部門以外)の受験予定の方
  • 技術士に興味はないけど、経営工学を勉強したい方

ぜひ、それぞれの目的に合わせて勉強にもお役立てください!

キーワード名

SCM(サプライチェーンマネジメント)

言葉の定義と背景

〇サプライチェーンマネジメントとは
サプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management)は資材供給・生産・物流・販売の供給連鎖(サプライチェーン)をネットワークで結び、それぞれの情報をリアルタイムで共有することによって、企業経営の効率とスピードを高める手法。
SCMの目標は、
 ①キャッシュフローマネジメント
 ②業務の全体最適化
 ③顧客満足の実現
である。

〇背景
SCMは1990年代後半から米国で普及した言葉で、日本では1998年から新聞やビジネス雑誌で大々的に取り上げられ、2000年くらいまでに様々な本が発行され、一大ブームの様相を呈した。

原理と特徴

〇SCMの仕組み
SCMは4つの要素から構成される。
SCP(Supply Chain Plannning)、SCE(Supply Chain Execution)、ERP(Enterprise Resouce Planning)、ロジスティクス業務からなる。

  • SCP(Supply Chain Plannning)
  • SCPソフトでASPや生産計画、納期回答などを行う。
    APSとはAdvanced Plannninng and Schedulingの略で「先進的スケジューリング」と日本語では表現する。
    APSは設備や作業者などの生産資源を、どの日程にどの順序で割り付けるか決める計画のこと

  • SCE(Supply Chain Execution)
  • SCMを実行するソフトがある
    物流センター管理や配送管理などの機能がある

  • ERP(Enterprise Resouce Plannning)
  • 企業資源計画という意味
    統合業務パッケージを利用する
    財務管理、在庫管理、生産管理などを行う

  • ロジスティック業務
  • 物流センター運営などを行う

これら4つの要素が有機的に結合されて、SCMは実現できる。

問題点・課題

SCMを実現する上では、以下のような課題がある。

〇意識改革・統一
関連企業を含めて全体の意識を統一する必要がある。
縦割りの意識が根付いている場合には、意識改革も必要。

〇資金と人材
システムを構築するための投資とIT人材が必要。
自社の特徴を踏まえたシステムの設計・構築・運用・管理する人材を育成することも必要。

〇多様化するサプライヤー
SCMは社内外を含め、製造から流通、販売まで関わる複数の関連企業も供給管理体制に組み込むことが必要。
一方で、現在の技術革新やIoTの普及といった背景、また様々なリスク分散の観点から以下のような状況となっている。
 

  • 技術革新やIoTの普及により、部品や部材の供給元が多様化
  • 頻発する自然災害のリスクに備えて工場拠点を分散化し、BCP(事業継続計画)を進める企業が増える
  • 原材料や部品を特定企業から調達するとリスクがあるため、取引先を広げ、安定した供給体制を構築している企業や業界も少なくない

多様化するサプライヤーをどのようにマネジメントし、SCMに組み込んでいくのかが課題。

〇サプライチェーンのグローバル化
IT技術の発達により、大手企業だけではなく中小企業もグローバルにマーケットに参入する事例が増えてきた。
グローバルな市場に製品を供給するためには、国内だけではなく海外の人材、原料、設備を投入する必要も出てくる。
その結果、供給体制が国内に留まらずグローバル化し、それに伴うリスクも拡大する。

最近では、新型コロナウイルスにより、海外市場との取引がストップするなど、企業の供給体制に影響を与える不確実な事象が問題となっている。

〇リアルタイムな情報収集
メーカーからの出荷・卸・販売といった流れを最適化するために、各セクションの連携を強める必要がある。
一方、多くの企業ではサプライチェーンが分断されており、各セクションに情報が分散化し、収集・集約が難しくなっている。

このような状況では、必要な情報共有が行われず、データの加工・分析に数週間要することになる。
消費者ニーズから需要予測をスピーディに行い、リアルタイムな供給体制を構築することが課題である。

解決策

サプライチェーンに関する問題を解決するには、SCMのシステムの導入が有効。
以下のような解決策を提案する。

〇サプライチェーン全体の情報を一元化
原材料の調達・製造・出荷・販売といったサプライチェーン全体の情報を一元管理する。
セクションごとに分散していた情報を収集し、タイムラグのない情報収集を行う。
情報収集・集約や基本的に自動で行い、情報はそのまま蓄積される。

社内でサプライチェーンの情報を整理したり分類したりする事務処理の手間やコストが軽減できる。
サプライチェーンの一元管理により、 災害時に供給体制がストップするリスクにも備えられる。

〇在庫を自動で最適管理
システム上で在庫を最適化できる。
販売数量のリアルタイムな変化に合わせ、自動的に在庫数量を増減させ常に在庫数を適正に保つことが可能。
在庫管理は経営に直結し、在庫の抱えすぎや欠品により経営に行き詰まるケースは少なくない。

売れ残った商品は棚卸資産だが、いつまでも現金化できないと消費期限が過ぎたり、市場の変化で販売できなくなる。
在庫管理を適正に行わないと、キャッシュフローの悪化を招く。
SCMシステムで適正な在庫管理が自動化可能なことは、経営管理上の大きなメリットである。

〇優れた情報分析
サプライチェーン全体から収集・集約・整理・分類したデータを分析することも可能。
その分析をリアルタイムでスピーディーに行えるのが特徴。
特に経営分析の専門的な知識がなくても、サプライチェーン全体の概況から改善が必要な点を「見える化」できるので、容易に把握できる。

具体的には、原材料や部品の調達方法はこのままでよいのか

  • 生産プロセスの見直しはないのか
  • 出荷・配送でリードタイムはないか
  • 販売ルートは変更しなくてよいか etc.

これまで見えていなかった問題を特定することで業務改善につなげる。

〇激しい需要変動に対応
サプライチェーンに関するリアルタイムなデータ収集・分析により、将来の需要変動にそなえたサプライチェーン体制を構築できる。
変化の激しい市場の動向を読み違えるリスクを減らし、常にサプライチェーンを適切にマネジメントすることができる。
また、ビックデータによる需要予測から、消費者にスピーディーに対応する供給体制も駆逐できる。
このような対応が可能になるため、ビジネスの機会損失も防ぐことができる。

適用例

1.ジャストインタイム方式:トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)
トヨタが発案した「ジャストインタイム方式」は、いまや日本だけでなく世界の製造業の多くで用いられるスタンダードとなりつつある。
ジャストインタイム方式とは、注文されたクルマを、より早く届けるために、次の4つの内容により最も短い時間で効率的に造る方式。

 ①お客様からクルマの注文を受けたら、なるべく早く自動車生産ラインの先頭に生産指示を出す。
 ②組立ラインは、どんな注文がきても造れるように、全ての種類の部品を少しずつ取りそろえておく。
 ③組立ラインは、使用した部品を使用した分だけ、その部品を造る工程(前工程)に引き取りに行く。
 ④前工程では、全ての種類の部品を少しずつ取りそろえておき、後工程に引取られた分だけ生産する。

つまり、「必要なものを、必要なときに必要な量だけ造る!」という考え方で、生産現場の「ムダ・ムラ・ムリ」を徹底的になくし、良いものだけを効率良く造る、生産性の向上に貢献にする生産様式。
(以上の内容の引用元:トヨタ生産方式)

この方式はサプライチェーン全体の最適化を体現しており、最も有名なSCM強化の例と言える。

ただし、こういったオペレーションを取る際は、下請け企業との良好な関係を心掛けると共に、公正な契約関係を保つために、最大限の注意を払う必要がある。

2.ロジスティクス部門による統合的管理と独自の物流の仕組み:花王株式会社(以下、花王)
花王では、サプライチェーンの全てのプロセス・データを統合的に管理するエンジニア集団としてのロジスティクス部門が存在している。
ここでは、消費が多様化され短期間で変動する市場の需要に応じて、商品を速やかに滞りなく供給する仕組みを構築するべく、需要予測技術の開発が主体となる活動が行われている。

また、「卸店を介することなく花王から小売店へ直接商品が運ばれる」という花王独自の仕組みを持っている。
店頭からの受注に欠品することのないように、物流拠点の最適在庫を、予測した需要予測に基づいて設計することもロジスティクス部門の役割。
これはサプライチェーンのプロセス管理の1つです。

参考:花王の仕事紹介・ロジスティクス部門

このように花王では、サプライチェーンの統括管理を行うロジスティクス部門において、需要の予測をするとともに、その需要予測を活かせるようなサプライチェーンの仕組みを構築し、実際に需要予測を活かした在庫調整を行っている。

3.SCMクラウドの導入:株式会社ローソン(以下、ローソン)
ローソンでは、もともとサプライチェーンの統合管理が進めらており、ローソンのサプライチェーンを管理する100%出資の機能子会社である株式会社SCIを設立するなど、SCMのデジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んできた。
こういった取り組みには、通常原材料の仕入れや製造を外注することの多いコンビニの中食食品の欠品や過剰在庫を防ぎ、原材料の廃棄を減らす、という目的が背景となっている。

その後2018年には、情報を常に共有し、サプライチェーン全体を可視化、コントロールできる仕組み作りのため、SCMのためのクラウドツールを導入した。
このツールの導入により、社内外、国内外に関わらず、サプライチェーン上にある在庫をリアルタイムに把握でき、次の工程や需要を見越した供給計画を立てることが可能になった。

将来の展望

SCMの導入によりサプライチェーン管理の課題を解決し、経営効率を高め、売り上げや収益の最大化を目指せる。
サプライチェーン管理の経営手法は、企業の規模を問わず、今後ますます重要になる。

SCM部門があるのは、大企業では70%を超えるが、中小企業は43%に留まり、中小企業でSCM部門の整備が進んでいない実態も明らかになった。
新型コロナウイルスの経験から、今後取り組むべきサプライチェーンにおける課題について、多くの企業が「業務プロセスの改革」「デジタル化推進」を挙げている。
これからも起こり得る感染症や災害リスクに備え、サプライチェーンの混乱を防ぐためにも、サプライチェーン管理に本気で取り組み、SCMシステムによるソリューションを検討する必要があります。

参考元

  1. 田島悟:生産管理の基本と仕組み, p150-151, アニモ出版, 2020年
  2. デジタルトランスフォーメーションチャンネル
  3. 企業が抱えるサプライチェーン管理の課題と解決策
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以上

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