はじめに
経営工学に関連したキーワードを学習していて気付いたことがあります。
「多面的な視点が養われ、汎用性がめちゃ高い!」
「技術士二次試験の経営工学部門に限らず、多くの部門に応用可能な知識や方法論が満載!」
ということで、技術士二次試験(経営工学部門)の対策をしている時にまとめてきたキーワード集をほとんどそのままご紹介!
本経営工学キーワードシリーズの記事の特徴として、ある1つのキーワードをについて
- キーワード名
- キーワードを取り巻く背景
- 原理と特徴
- 問題点
- 解決策
- 応用例
- 今後の展望
これらのような、あるいはこれらに近い視点でまとめています。
これはそのまま、技術士二次試験対策に直結するまとめ方です。
このシリーズの記事は次のような方にオススメです!
- 技術士二次試験(経営工学部門)受験予定の方
- 技術士二次試験(経営工学部門以外)の受験予定の方
- 技術士に興味はないけど、経営工学を勉強したい方
ぜひ、それぞれの目的に合わせて勉強にもお役立てください!
キーワード
ドローン
ドローンの定義と背景
〇ドローンとは
ドローンは、無人で遠隔操作または自動操縦が可能であり、かつ重量200g以上の機体と定義される。
2015年の航空法改正によって定義された。
実際には遠隔操作や自動操縦が可能な小型無人機が総称してドローンと呼ばれている。
〇ドローンの開発の背景
第二次世界大戦中に軍事目的でドローンが開発された。
ドローンの役割は爆弾を搭載し、敵機に衝突させること。
当時は実用化には至らなかったが、その後も軍事目的で開発が進められた。
第二次世界大戦から約30年後の1970年代には、技術の進歩によりドローンの小型化や高性能化が実現。
そしてその後はGPSが普及したことで、ドローンの自動飛行が可能となり、偵察機としてドローンの開発が進んだ。
今でこそ、産業用・娯楽用といったイメージのドローンだが、もとは軍事用。
ドローンの開発者は軍事機密のため未公開となっている。
原理と特徴
まず、物が浮く現象には2つの要因を理解する。
①水や空気などの流体中で生じる浮力を起因とするもの
②翼の上下を流れる流体の圧力差により上昇する力が生じ、揚力を起因とするもの
ドローンはブレードと呼ばれる翼(回転翼)を高速回転させることで、空気が翼に当たり翼力を発生させて飛行する。
市販されているドローンの多くは、電気を原動力としてブレードを回転させる。
ブレードを回転させる原動機部分はロータと呼ばれる。
ロータに流れる電流を変化させることで、翼の回転速度を調整し、翼力が変化することで自在に空中を飛行できる仕組みになっている。
問題点
〇技術的問題点
現在ドローンは、農業・物流・医療・警備・防衛などの様々な分野での活躍が期待されている。
実証実験がされているケースも多く、サービスの実現可が期待される。
しかしこれらのドローンビジネスを成功させるには、人口の集中する都市部でサービスを展開する必要性が高まる。
ドローンにより生活の利便性が高まることは分かっていても、上空を飛行する無人機という特性上、墜落事故などのリスクは避けられない。
実際にドローン関連の事故は多数報告されている。
また、分野によってはドローンの開発が十分でないケースも多く、技術的な課題は多く残されている。
〇法律面での問題点
ドローンは航空法をはじめ、様々な法律で規制されている。
しかしまだ法整備が整っていない部分もあり、産業利用となればまた新たな法律が設置される可能性もある。
法律面では、政府との協調を図り、柔軟な対応が必要となる。
また、ドローンに関連する法律が公表されたとしても、一般的な認識として法律が浸透するのにも時間がかかる。
実際に、航空法をはじめドローンに関する法律は、一般的な認識としてはまだまだ浸透しきっていないのが現実である。
解決策
技術的解決策
〇「AIの目」で危険を予測・回避
今後、利便性を追求するにあたり「補助者なしの無線操縦による目視外飛行」(レベル4(のちに詳述))は必要な技術である。
一方、衝突と墜落の危険は払拭しきれない。
そこで、ドローンは「無線による操り人形」から「自律型の空飛ぶロケット」に進化する必要がある。
例えば、準天頂衛生システム(全地球ではなく、局地的な位置情報サービスを目的とした人工衛星)”みちびき”の高精度衛星測位を利用した「空のハイウェイ」上を飛行管理センターからの速度等の指示を受けて「AIの目」で危険を予測・回避しながら自律航行を支援する。
Google社からスピンアウトしたSkydio社が開発した小型ドローン(Skydio 2_車体重量800g弱)はAIの目を備えた障害物回避飛行を実現しており、日本でもすでに市販されている。
Skydio 2の主な仕様
・計6個4Kカメラを搭載し、Visual-SLAM(Simulataneous Localization And Mappinng: 3次元地図作成と自己位置推定同時技術)を実現
・上記システムにより、360℃全方位の三次元空間状況をリアルタイム把握
・障害物回避の飛行ルートをリアルタイム算出
・最高速度58km/ h
これらの機能により、木や民家が密集した場所でも低空で高速飛行可能となる。
〇「AIの目」はディープラーニングで実現
森林の中でも4Kカメラで対象物を追尾撮影し、衝突を避けつつも対象物を見失わないといったことが可能である。
これはVisual-SLAMに加えて、ディープラーニングで実現している。
AIコンピュータ(NVIDIA社のJeston TX2)をSkydio 2のフライトコントローラとして搭載し、9つのニューラルネットワークを同時に稼働させている。
TX2は組み込みコンピュータとして必要なGPU、CPU,メモリ、入出力インターフェースなどで構成され、サイズはクレジットカード大である。
消費電力は75W。
法律面からの解決策(レベル4に向けた制度整備)
〇無人飛行機の登録制度の創設
2020年の航空法の改正により、無人飛行機の登録制度の運用が決定。
2022年ごろからの予定。
これにより、無人航空機は国土交通大臣が定める「無人航空機登録原簿」に機体や所有者に関する情報を登録して、通知された「登録記号」を機体に表示させなければ飛行させることができなくなる。
さらに、本制度運用開始に合わせて、ドローンの定義の機体重量は100gに引き下げられ、より規制が強化される。
〇無人航空機の機体認証制度の創設
本制度は2021年の航空法の改正により創設された。
制度運用開始は2022年頃の予定。
本制度により、国土交通大臣は国土交通省令で定める安全基準に照らして機体を検査し、合格した機体には機体認証を行う。
第一種機体認証と第二種機体認証の2区分を設けている。
さらに、第一種型式認証と、第二種型式認証も設け、合格した機種に型式認証も行う。
〇無人航空機操縦者技能証明書制度の創設
本制度は2021年の航空法の改正により創設された。
実際の制度運用は2022年頃の予定。
本制度により、国土交通大臣は一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士の資格区分を設けて、試験を実施する。
試験は16歳以上であることが要件であり、身体検査、学科試験、実地試験が課される。
本試験の合格者には技能証明が与えられる。
技能証明の有効期限は3年で、無人航空機更新講習の受講終了によち更新可。
〇運用ルール
有人地帯での補助者なしでの目視外飛行(レベル4)は、一等無人航空操縦士の資格保有者が第一種機体認証(第一種型式認証)を受けた期待を飛行させる場合に、国土交通大臣の許可・承認を受けたうえで可能となる予定。
また、これまで国土交通大臣の許可・認証を必要としていた飛行は、技能証明を有する者が機体認証(型式認証)を受けた機体を飛行させ、飛行経路下の第三者の立ち入りを管理する措置の実施等の運行ルールに従う場合には、原則として国土交通大臣の許可・承認は不要となる予定。
さらに、無人航空機を飛行させるものに対し、事故(人の死傷、物件の損壊、航空機との衝突・接触等)発生時の国への報告が義務付けられ、重大事故については運輸安全員会の調査対象となる。
応用例
〇農業分野
1980年代に、日本は世界初、無人ヘリコプターによる農薬散布を始めた。
近年、無人ヘリコプターではなくドローンによる農薬散布も試みられている。
- 無人ヘリコプターの特徴
- ドローン
航行時間:60分、散布能力:10,000m^2/10分、農薬積載量:20kg
機体価格:200万円(ヘリコプターの5分の1)、操縦難易度:無免許OK(ヘリコプターのは要免許)
農業へのドローン活用における農薬は、液状・粒状・粉状、様々対応できる。
ただ、他人の土地に散布してしまう恐れがある点に注意。
ドローンにセンサーを搭載することで、生育状況や土壌状況を分析し、ピンポイント散布など生産性の向上が期待できる。
また自律飛行による農薬散布により、後継者不足が懸念される農業においては救世主となりうる存在である。
〇災害・捜索
ドローンの活用方法として、災害発生前と発生後に分けて解説する。
- 災害発生前
- 災害発生後
災害監視に活用される。
例えば、土砂崩れが発生しそうな箇所を衛星データにより特定し、その個所をドローンで巡回する。
崩落の危険性が高まったら避難を仰ぐなどの活用方法。
災害発生後の活用方法として、状況把握・捜索・物資輸送などがある。
ドローンに搭載されたカメラで状況把握を行い、赤外線センサーなどを用いて捜索を行う。
物資輸送として想定されるのは、水難用ブイなどの救助用具、食料や資材などの物資の運搬、災害現場からの土砂の運び出しなどが考えられる。
陸路が塞がれるなどの場面で効果が期待できる。
総務省では消防署にドローンを支給するなど、災害時を想定したドローンの活用に期待が寄せられる。
〇土木・建設・測量
ドローンによる3D測量を活用し、土木工事における生産性向上が可能となっきている。
従来であれば数週間の日数を要していたものが、数時間で完了することができます。
また、土量測量や建物の品質管理・安全管理に活用されている。
土量測量に関しては、専用システムを活用することで3次元CADを使わずに土量測量ができる。
また、従来であれば、足場を必要とした作業においても、ドローンを活用することで足場を不要とした構造物の維持管理が可能となっている。
今後の展望
利便性の高い”空の産業革命”を進展させるため、2022年には「レベル4」が解禁される。
レベル4とは、ドローンが有人地帯上空(第三者の頭上)を補助者なしで目視外飛行することを意味する。
目視外飛行とは、ドローンの挙動が操縦者から目視確認できない状態での飛行のこと。
GPS(衛星測位システム)のナビゲーションに基づき、ソフトウェアで自律航行する飛行が主となる。
補助者とは、操縦者から見えない遠方にドローンを飛行させる場合に、操縦者に代わってドローンの挙動を目視確認するために飛行ルートに沿って配置することを義務付けられた者を指す。
このような補助者配置の義務付けは、ドローンの利便性を損ね、”空の産業革命”進展の支障となっていた。
GPSとソフトウェアにより、自律航行可能となるが、ソフトウェアの不具合や誤作動によるトラブル発生時に操縦者による咄嗟のリカバリは必要となる。
そこで問題となるのが事故を起こした場合の「責任の所在」である。
例えば、ドローンの衝突・墜落により人身事故につながった場合、「業務上過失致死傷罪」の責を負うのは、一等無人航空機操縦士なのか、第一種型式認証を受けた業者なのか、明確でない。
車の「自動運行装置」の保安基準のように、”有人地帯をソフトウェアで自動航行するドローン”についても「責任の所在」を明確にする「保安基準」が必要と言える。
補足)
〇ラストワンマイルとは
物流において、最終拠点からエンドユーザーへの物流サービス
ここでのマイルとは、距離的な意味ではなく、区間という意味合いになる。
〇ラストワンマイルでの競争激化
EC(ネット通販)市場への参入事業者が年々増加している中、送料無料・当日配送などの物流サービスによる差別化に取り組む事業者が多く、ラストワンマイルの物流サービスにスポットがあたっている。
Amazonなどの大手通販事業者が展開している、全国対応、当日配送、翌日配送サービスが良い例である。
従来、拠点を集約し、配送の部分を宅配業者に委託する形で物流を構築していたものを、よりエンドユーザーに近い場所に配送拠点を設けることで、ラストワンマイルを縮めてサービス強化する動きが活発化している。
ラストワンマイルの物流サービスの向上が、EC事業者の販売戦略の大きな要素となってきている。
一方、
- 宅配業者への配送料金が、見合っていない
- 年々増加し続ける宅配貨物の物量
- 再配達による業務効率の低迷
- 労働人口の減少や作業内容等の物流労働環境の問題により、物流の担い手が年々減っている
といったことが問題となっている。
参考
- mazex DRONE IS IN YOUR HANDS
- Tech Note
- 技術士 PE 2021.11 P20~(月刊技術士)
- Future Dimension
T
https://www.ipros.jp/technote/basic-drone/
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