【技術士】二次試験 「技術士法」を理解し勝率を上げよう

技術士試験【全部門】
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9割は情報戦略だ!


技術士試験に限った話ではありませんが、「試験に挑む」「プレゼンを成功させる」「試合に勝つ」などなど。
もっと抽象化するならば何らかの「壁を超える」には、当然ながらその壁たる相手を知るべきです。
中国の戦国時代に孫氏は「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉を残しています。
つまり、「相手の特徴、そして自分の強み弱みを知り、適切な戦略を講じることで勝率を劇的に上げることができる」と解釈できます。
これは技術士のような国家試験においても同様です。
技術士試験においては何を知ればいいのでしょう。
ここでは、情報戦略として一次情報(技術士法)と二次情報(コンピテンシー)に分けて考えましょう。
この記事では一次情報である技術士法について解説します。

技術士法は超重要な一次情報


技術士二次試験突破のカギとなる一次情報は技術士法です。
結論として、要点は以下の3点にまとめられます。

  1. 技術士法の目的
  2. 技術士の定義
  3. 3義務2責務

いや、ちょっと待って。「技術≠法律」でしょ。
「技術士って「技術」って付くし、技術的な専門知識を問うんでしょ。」
「なんで技術士法なんて知らなきゃいけないの。私は建設/機械/電気/金属・・・の専門家ですよ。」
そう思って当然です。私もそう思ってました。
ただ、技術士は技術的な知識や経験をアピールする”だけ”の試験ではないのです。
あくまで、「国家資格」です。国家資格である以上、それを規定する法律があり管轄する省庁があります。
そうである以上、

  • 国家資格としての何がしかの基準がある
  • その基準を満たしているかどうかを客観的に審査される

と割り切りましょう。
そして割り切ったからには、その基準を明らかにし”淡々と、それでいて深く”理解し身につけましょう。

それでは早速、「技術士法」について見ていきましょう。
技術士法の要点は先にも示しました3つです。
1つずつ解説します。なお、昭和五十八年四月二十七日法律第二十五号を基準とします。

技術士法の目的


(目的)第一条 この法律は、技術士等の資格を定め、その業務の適正を図り、もつて科学技術の向上と国民経済の発展に資することを目的とする。

いかがでしょうか。ちょっと固い表現でとっつきにくいですね。
ポイントは「科学技術の向上」と「国民経済の発展」です。

まず、「科学技術の向上」について考えてみましょう。
ここで、自問自答していきます。
自分が現在行っている仕事が

  • 科学技術の向上と国民経済の発展に寄与しているか(YES or No)
  • どのように寄与しているか(How, What)

ここで1つ目の答えがNoだと、この先の対策が厳しいです。
技術士を目指す人であればもう答えはYESの一択です。Noの方は2つ目の質問の深堀不足です。
ここで深堀することは技術士試験では避けられない、業務経歴票作成、筆記(論文)試験、口頭試験に間違いなく生きてきます。
深堀の仕方がわからない方は、品質管理手法の1つ「系統図法」やトヨタ生産方式の「なぜなぜ分析」などを活用しましょう。
これらの方法については別の記事で詳述します。

次に、「国民経済の発展」について考えます。
「科学技術」については問題ないかと思いますが、「国民経済」って何でしょう。
改めて聞かれると正確に即答って難しいですよね。困難は分解せよということで言葉を分解します。
「国民」は私たち日本の国民です。
「経済」は、コトバンクを参照すると、モノやサービスの”生産・分配・消費”や”経世済民”(国を治めて民を救済する)と書かれています。
技術士試験の対策からそれているように感じるかもしれませんが、焦らず考えましょう。
皆さんが行っている普段のお仕事がサプライチェーンやエンジニアリングチェーンの中で、科学技術や国民経済にどう関与しているか。
ここについて一度深く考えて、できれば文章化したり箇条書きでもいいのでまとめることが、技術士試験対策のみならず社会人生活に必ず生きます。

技術士の定義(一部抜粋)


(定義)第二条 技術士の名称を用いて科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価及びそれらの指導の業務を行う者をいう。

ここでのポイントは以下の2つです。

  • 科学技術に関する「高等の専門的応用能力」を必要とする
  • 計画、研究、設計、分析、試験、評価又はそれらの指導」の業務

です。
1つ目に関しては、要するに簡単なルーチンワーク的なものではないと解釈しましょう。
誰か、上司や専門スタッフから指示されてこなしている単純作業ではなく、自らが主体的に考え専門性を活かした業務を行っているかということです。
「学会で表彰を受けた」「特許を取得した」などの成果でなくても全く問題ありません。
技術士を志す皆さんであれば、すでに普段行っている業務でも、この定義にあたると思います。
その業務をどのように「解釈、表現、アピール」するか次第ですので、ひるまずに進みましょう。

2つ目も要するに、製造、生産技術、品質管理、研究開発、現場の指導など、広い意味で科学技術(自然科学)に関する業務と捉えて差し支えありません。
技術士を志す人であれば、このどれかには該当するでしょう。
ここでもやはり「解釈、表現、アピール」次第ですので自信をもって対策しましょう。

3義務2責務


これは主に、口頭試験で問われる内容ですが、筆記試験対策の段階で意識しておくと論文の質が向上します。
早い段階でおさえておき、頭に入れちゃいましょう。
その前に、「義務」と「責務」って似たような言葉ですが、わざわざ言い分けてるわけですから、その違いを押さえましょう。

  • 義務:当然しなければならないこと
  • 責務:自らの責任において果たすべきこと

と捉えておきましょう。
「義務」強制力が強いベースライン、「責務」はより理想形に近づくための努力が求められる要素が強いといったイメージです。
それでは、3義務2責務を見ていきます。

  • 信用失墜行為の禁止(義務①)
  • 秘密保持義務(義務②)
  • 技術士の名称表示の義務(義務③)
  • 公益確保の責務(責務①)
  • 資質向上の責務(責務②)

詳しくは、技術士法四十四条~四十七条を見てみましょう。

(信用失墜行為の禁止)

第四十四条 技術士又は技術士補は、技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ、又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

以下の通り解説します。
それほど難しいことはなく、そのままです。
ここでは技術士と技術士補を総称して技術士等と表現します。
技術士等はその名称を用いる以上、自分自身や自分の所属する会社などの組織の信用だけを考えてはだめです。
「歴代の技術士等の先輩方や、自分以外の技術士等が懸命に築いてきた「技術士等」としての信用をみんなで守って維持しましょう」ということです。
それでは、逆にどのような行為が信用を傷つけたり不名誉となるのでしょう。
いろいろありますが、「データの捏造・改ざん」「虚偽の報告」「不当な報酬の授受」「それらが疑われる行為」などがそれにあたります。
社会的に問題となっている倫理問題、あなたの業務においてちょっと間違えばそのような問題に発展しかねない状況などをいくつかリストアップしましょう。
日本技術士会のHPにも反倫理事例が掲載されていますし、日経ビジネス、日経ものづくりなどのでも反倫理事例を扱った記事があります。
全て網羅する必要はありませんのであなたの分野に近い事案などは「背景、実態、原因、社会的影響、改善策」の視点で簡単にまとめておくと、あらゆる倫理問題に対しても応用が利きます。

(技術士等の秘密保持義務)

第四十五条 技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなつた後においても、同様とする。

技術士等の秘密保持義務について以下の通り解説します。
まずは、要素に分解しましょう。

  • 正当な理由がなく
  • 業務に関して知り得た秘密や情報を漏らす又は盗用する
  • 技術士等でなくなった後においてもこの義務を負う

となります。
「正当な理由がなく」とありますが、正当な理由とは何でしょう。
後に詳しく触れていきますが、「技術者倫理」や「技術士倫理綱領」がとても参考になります。
技術者倫理って何? 技術士倫理綱領って何?という方はまずは下記を参考にしてください。

ポイントは「公益確保/公衆の利益に反するか」になります。
例えば、「これは顧客情報だけど、知らないふりをし続け放置すると著しく環境を害する」といった状況は起こりうるでしょう。
その際は正当な理由に該当する”かも”しれません。

もっとシンプルな例では、「当社の機密情報を、このプロジェクトの関連会社には公表してよい」などと許可を得た場合も正当な理由に該当する”かも”しれません。
要するに、「公益(公衆の安全・健康・福利)」は最優先と考えるのが技術士です。
顧客の秘密を守り通すことが公益を害することに繋がるのであれば、秘密を保持することは倫理上妥当ではないと判断します。

ですが、先の例で”かも”と強調したのには理由があります。
「この条件が整えば、正当な理由になる」という絶対的なものはないと私は考えます。
技術士といえどもデリケートな案件は独断せず、上司、コンプライアンス窓口、弁護士などの専門家、行政機関、関係省庁などに相談することも必要です。
そのようなプロセスを経た結果として、最終的には技術士が主体性を持って正当な理由となりうるかを判断する姿勢が大切です。
また、「技術士又は技術士補でなくなった後」もやはり秘密保持は継続しましょう。
技術士が将来も社会的信頼を得続け活躍するには必然の配慮です。

(技術士の名称表示の場合の義務)

第四十六条 技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。

技術士の名称表示の場合の義務について以下の通り解説します。
これはそんなに難しくありませんね。
要は名刺、メールの署名欄、履歴書、看板等々、「技術士」を名乗ったり保有資格として表示するときは「技術士(○○部門)」と「部門」を明示せよということです。
後に詳しく解説しますが、この義務は10項目ある「技術士倫理綱領」の3番目「有能性の重視」に深く関係します。
技術士倫理綱領の有能性の重視は下記のように書かれています。

(有能性の重視)
3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。

とあります。
要は、自分の専門外の分野について知ったかぶりで無責任な仕事をしてはいけない。
詳しくない分野には手を出さず、詳しくない事実を表明し、他の専門家を紹介するなどの対処をせよ。
ということです。
裏を返せば、自分の専門領域を明示する、ということになります。
「技術士の名称表示の場合の義務」は「有能性の重視」と表裏一体となりますので覚えておきましょう。

(技術士等の公益確保の責務)

第四十五条の二 技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たつては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。

技術士等の公益確保の責務について以下の通り解説します。
この条文だけを見ると、”当たり前”、または”綺麗事”のような印象を受けるかもしれません。
いえいえ、とんでもない!
技術士においてこの「公益確保」が非常に、いや”最も重要”と言って過言ではありません。
その根拠とも言える文言が、技術士二次試験案内中にあります。以下の内容です。

業務遂行にあたり,”公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で”,社会,文化及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続性の確保に努め,
技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。」

とあります。
「公衆の安全、健康及び福利」≒「公益」と捉えらますね。
これを”最優先”と断言しています。
それだけ科学技術は周囲の環境のみならず、社会経済、地球環境に絶大な影響を及ぼす力を持っており、
その科学技術の進歩や運用を担う技術士には、公益確保を貫ける強い倫理観が必要というわけです。
他の専門職と比較するとよりその重要性が分るでしょう。
例えば、医師や弁護士であれば、患者や依頼人がどんな素性、どんな公益に反し人の命を奪った犯罪者であっても、その者の健康や命を救い、また弁護することが責務と言えるでしょう。
しかし、技術士は目先の利益やコスト、ごく狭い範囲の利得や損害ではなく、「広域的かつ永続的な公益」に常に主眼を置き、意思決定を行うことが責務とされている点が他の専門職と異なる点と言えるかもしれません。
公益確保については、また口頭試験対策で掘り下げます。

(技術士の資質向上の責務)

第四十七条の二 技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。

技術士の資質向上の責務について以下の通り解説します。
技術士に限らず、資格・学位・地位を得た後もその能力の維持向上に努めることが自ずと期待されます。
技術士は、登録部門の専門家としてのアドバイス、知見、コンサルティングを期待されます。
科学技術や社会情勢は日々変化・進化する一方で人間の能力は漫然と過ごしていたら低下する一方です。
周囲の期待に応え、社会貢献を担うためには資質向上は必須というわけです。
また、日本技術士会では「技術士CPD」という制度を設けています。
CPDは「Coutinuing Professional Development」の略で、日本語訳では様々な表現されますが、技術的には「継続研鑽」と訳します。
技術士がプロフェッショナルであり続けるために、継続研鑽活動を自ら設定、記録、証明するものです。
継続研鑽についてはコンピテンシーや口頭試験対策のテーマで詳しく触れていきます。

まとめ ~やっぱり、技術士法の理解こそ最強の武器~


いかがでしたでしょうか。
技術士法は法律ですので、普段技術畑にいる私たちにとってはなかなかとっつきづらいところですね。
とはいえ、あくまで表現が堅苦しいだけです。
本質は割とシンプルですので難しく考えずにこの記事の解説のとおり咀嚼して、本質を理解しましょう。

ここでざっとおさらいしましょう!

  1. 9割は情報戦略だ!
  2. 何に付けても良質な情報を収集することと、その情報をベースに戦略を練ることは非常に大切です。
    技術士二次試験においてもそれは例外ではありません。
    技術士試験においても良質な情報をしっかりキャッチして戦略的に戦い抜きましょう!

  3. 技術士法は超重要な一次情報
  4. 最もベーシックな情報源である「技術士法」は実に良質な情報源と言えます。
    “技術士”は技術士法で規定された国家資格の取得者であり登録者です。
    技術士二次試験でアピールすべき要素、そのヒントであり答えが一次情報である「技術士法」に含まれています。
    ポイントを押さえてしっかり頭に入れましょう。

  5. 技術士法の目的
  6. 技術士法の目的は「科学技術の向上」と「国民経済の発展」の2つでしたね。
    その目的を果たすための精鋭部隊が”技術士”となります。
    技術士を目指す皆さんは、科学技術の向上と国民経済の発展に寄与することが業務上求められています。
    そこを忘れずに試験対策をしていきましょう。

  7. 技術士の定義
  8. 技術士には明確な定義がありました。

    ポイントは以下の2つでしたね。

    • 科学技術に関する「高等の専門的応用能力」を必要とする
    • 「計画、研究、設計、分析、試験、評価又はそれらの指導」の業務

    この2つは丸暗記するぐらい頭に叩き込んじゃいましょう。
    ここから外れてしまうようだと、合格も遠のいちゃいますよ!

  9. 3義務2責務
  10. 特に口頭試験で重要となる3義務2責務。
    筆記試験でも公益確保の視点などはとても重要ですので、筆記試験対策の段階で頭に入れちゃいましょう。

    ①(信用失墜行為の禁止)
    ②(技術士等の秘密保持義務)
    ③(技術士の名称表示の場合の義務)
    ④(技術士等の公益確保の責務)
    ⑤(技術士の資質向上の責務)

    の5つです。

技術士法を自分なりに理解して、合格率をしっかり上げてくださいね!
一次情報に次いで、いやそれ以上に!?重要な二次情報「コンピテンシー」についてはこちらの記事を参照してください。

【技術士】二次試験 「コンピテンシー」を理解しさらに勝率を上げよう
技術士二次試験は、コンピテンシー(資質能力)が試される試験と言い切ってしまってもいいです。で、そのコンピテンシーって何?という答えがはっきりしないまま専門知識を詰め込むような対策は大変非効率!この記事を読んでコンピテンシーについて理解を深めて効率的学習を進めて下さい。

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