はじめに
経営工学に関連したキーワードを学習していて気付いたことがあります。
「多面的な視点が養われ、汎用性がめちゃ高い!」
「技術士二次試験の経営工学部門に限らず、多くの部門に応用可能な知識や方法論が満載!」
ということで、技術士二次試験(経営工学部門)の対策をしている時にまとめてきたキーワード集をほとんどそのままご紹介!
本経営工学キーワードシリーズの記事の特徴として、ある1つのキーワードをについて
- キーワード名
- キーワードを取り巻く背景
- 原理と特徴
- 問題点
- 解決策
- 応用例
- 今後の展望
これらのような、あるいはこれらに近い視点でまとめています。
これはそのまま、技術士二次試験対策に直結するまとめ方です。
このシリーズの記事は次のような方にオススメです!
キーワード名
出稼ぎ労働者の熟練度と勤労意欲
背景
中国における農村部から都市部への出稼ぎについて、1978年の改革開放から都市労働力市場における雇用主体が公有部門(公)から非公有部門(民)に切り替えられ、農村出稼ぎ労働者の受け皿として非公有部門の役割が非常に大きくなっている。
私営企業や外資企業などの非公有企業の出稼ぎ労働者の雇用について労働力市場の不完全性による様々な問題が発生し、出稼ぎ労働者の安定就業に影響を与えるばかりでなく、都市部の社会治安の悪化や労働力資本の浪費などの問題も招きかねない状況である。
また、韓国、台湾、及びドイツにおけるミドル・ロースキルの外国人労働者の労働市場の特徴からは、ミドルスキルを持つ外国人労働者の受入れ、あるいは育成制度の設計の難しさが浮き彫りになったといえる。
韓国・台湾では外国人労働者の多くが、滞在期間が長くなっても、ロースキル、低処遇に留まっている一方で、ドイツでは職業資格制度の厳格な運用のために、労働需要に対してミドルスキルの労働者の供給が足りていない状況にある。
韓国・台湾と似た在留資格を基本とする我が国において、今後ミドルスキル人材の労働供給を高める必要がある場合、外国人労働者のスキルと処遇の向上を図るための労働市場をどう形成するかは大きな課題になると考えられる。
日本では、技能向上が認められた技能実習生に対する実習期間の延長や、特定技能 1 号、2 号への移行が可能な制度へと変更されることとなるが、こうした制度が適切に運用され、外国人労働者の技能形成と処遇の向上が図られることが期待される。
問題点
〇労働者の食と住及びそれらに起因するコスト
出稼ぎ労働者の雇用の確保する上で重要なのが食と住である。
雇用主側で宿舎や食事を無料で提供するケースもあるが、雇用主側でコストを負担することとなる。
〇生産量と労働者の収入が不安定
受注とそれに見合った生産量が一定ではなく、波が生じる。
一般的に出稼ぎ労働者が担う業務は生産ラインや建設現場などの単純作業が多く、稼働率が低い期間は現場作業員である労働者を休暇にせざるを得ない。
その場合、その期間無給となるケースも多い。
〇スキルアップが難しい
韓国・台湾などでは外国人労働者の多くが滞在期間が長くなってもロースキル・低処遇に留まるケースが多い。
また、ドイツでは職業資格制度の厳格な運用のため、労働需要に対してミドルスキルの労働者の供給が足りていない。
韓国・台湾と似た在留資格を基本とする日本においては、ミドルスキル人材の労働供給を高めるにあたって、外国人労働者のスキルと処遇の向上が必要となる。
解決策
〇人材採用の基準見直し(経歴<人物)
韓国や台湾では、労働移動が困難な場合、就労環境や労働条件が合わないなどの事情で失踪・不法滞在・不法就労を誘発し、自国民労働者の雇用機会を奪いうなどの影響を及ぼしかねない。
一方日本では、技能実習制度があり、特定の実習先において技能実習計画に基づき技能形成を図るという趣旨から、自由な労働移動は認められていない。
しかし、新たな在留資格である特定技能1号・2号の労働移動を認めている。
今後、「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」(2018年12月閣議決定)で定められたように、ハローワークにおける多言語対応や本人の希望に沿った転職支援を行うことで、外国人労働者の安定した就労が確保されることが期待される。
〇教育システムの拡充(スキルアップ)
日本では技能向上が認められた技能実習生に対する実習期間の延長や、特定技能1号・2号への移行が可能な制度となっている。
こうした制度が適切に運用され、外国人労働者の技能形成と処遇の向上が図られることで出稼ぎ労働者を取り巻く労働市場の改善が期待される。
また、通訳を介した教育には伝わり切らないところがあるため、紙媒体や動画を用いた教育が効果的。
「こうしなさい」という教育だけでは不十分で、「これをやってはダメ」という禁止事項を伝えるのも効果がある。
〇マズローの欲求5段階説
心理学理論の「マズローの欲求5段階説」によると人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されているとされている。
これはアメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(1908~1970)によって提唱されたもの。
ピラミッドの構造は、下位から上位へ「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」となっている。
このピラミッドの序列により、下層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を満たそうとするとされている。
裏を返すと、仕事上の部下や従業員に対して意欲の向上を図る目的で、いくら上位の欲求に働きかけても下位の欲求が満たされていないようでは効果は薄いと言える。
生活環境や職場環境の安全や安心が確保されていない(安全欲求が満たされていない)状況下で、承認欲求や自己実現欲求に訴求した施策を講じることは合理的でない。
例えば、労働者が役所に提出する書類づくりのサポートなどの生活面に至っても支援を行う必要があると言える。
人の心理メカニズムに根差した教育制度や処遇改善が就労意欲の工場には欠かせないと考えられる。
さらにマズローは自己実現欲求より上位の欲求があるとしている。
「自己超越の欲求」といい、社会貢献など、見返りを求めずエゴもなく、目的の遂行や達成だけを純粋に求める領域で、何か課題や使命、職業や大切な仕事に貢献したいという欲求である。
この領域に達する人は人口の2%ほどで、スポーツで言う「ゾーンに入る」とはこの状態のことを指す。
〇QCDは実績で評価
仕事ぶりでの評価も大切だが、評価者の主観に流されやすい側面もある。
仕事そのものの成果物・生産性・出来高・生産効率・欠勤の有無など、客観的指標を用いた評価を行うと同時に、適切なタイミングで昇給・昇格を行う。
今後の展望
社会のグローバル化に伴い、日本の企業、研究機関等においては、世界に通用する専門知識・技術等を有し、異なる教育・文化等を背景とした発想が期待できる専門的・技術的分野の外国人労働者に対するニーズが一層高まっている。
それは、海外現地での建設や製造を行うプロジェクトにおいて、労働者を現地で調達する場合においても同様である。
日本国内に外国人労働者を受け入れる場合は、社会・経済情勢を勘案しつつ、在留資格や在留資格基準を見直しを検討する。
また、少子高齢化に伴う労働人口不足を解消する上では、女性や高齢者などの労働力を有効に活用していくことと併せて外国人労働者の雇用も検討するべきである。
不法就労対策については、関係行政機関との連携、協力の下、人権擁護に留意しつつ、悪質な仲介業者や事業主の取締りの強化、事業主への啓発・指導等、的確な措置を講ずることも必要である。
さらに日本での適正な就労を促進するため、不法就労外国人を多く送り出している国等において、我が国の外国人労働者受入れ方針、制度等に関する周知、啓発を推進するべきである。
このような状況の中で日本の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、専門的・技術的分野の外国人労働者の受け入れをより積極的に推進する必要がある。
参考
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング:外国人労働者の受け入れによる労働市場への影響に関する調査研究事業報告書(厚生労働省委託事業), 平成31年3月
- 石暁紅:私営企業に就業する農村出稼ぎ働者の意識と行動, 現代社会文化研究No.32, 2005年3月, pp51-68
コメント