はじめに
私は、令和2年度技術士二次試験(金属部門)に合格し、その経験を活かして技術士二次試験対策関連の記事をまとめてきました。
こちらの記事にまとめています。
この記事を書いている今、経営工学部門に挑戦すべく、自分なりに勉強を進めています。
勉強していて思うのが、「経営工学の勉強をもっと早くしていればよかった!」ということ。
非常に汎用性の高いフレームワークの詰まった経営工学の知識についてまとめていきつつ、様々な部門の技術士試験受験者はもちろん、あらゆる専門の技術者の方の役に立つ知識を提供していきます。
- これから経営工学を学びたいとういう方の参考に
- 技術士試験に挑戦したいという方の応援に
- 自身の備忘録も兼ねて
このような目的に経営工学キーワードシリーズを連載していきます。
是非お付き合いください。
経営工学のキーワードはとっても便利!?
技術士二次試験の対策をした経験の方であれば皆さん感じるところかと思いますが、当然ながら専門知識だけでは到底論文は書けませんよね。
技術士二次試験では、
- 専門的学識
- 問題解決能力
- 評価
- マネジメント
- リーダーシップ
- 技術者倫理
これらの能力がすべて問われます。
技術士試験ではコンピテンシー(資質能力)と言ったりします。
これらの資質能力を直接的に問う、というよりは”独特な試し方をされる”といった方が正確かもしれません。
その辺りについては、こちらの記事に詳しくまとめていますのでご参照ください。
金属部門に合格してから経営工学の勉強を始めたわけですが、まず率直な感想。
「こんな便利な分野、もっと早く勉強しておけば良かった!!」
ということです。
例えば、問題解決能力は
- 問題抽出力
- 課題設定力
- 解決策提案力
これらを総合した力を指しますが、問題抽出における視点(観点)は多面的さが求められます。
この”多面的“というポイントが、まさに経営工学の手法や知識の中にふんだんに盛り込まれています。
例えば、
- 生産の3M(Man, Machine, Material, Method)
- 生産管理の管理目標PQCDSME(Productivity, Quality, Cost, Delivery, Safety, Moral, Environment)
- SCM(Supply Chain Management)
- サービスマネジメントの7P(Product, Place, Place, Promotion, Personnel, Process, Physical evidence)
などなどは、経営工学ではおなじみのワードとなってきます。
経営工学では、これらのような横文字や英単語の頭文字を取った、管理項目や分析手法がオンパレードで登場します。
もちろん、「適切に使いこなしてこそ」ではありますが、これらの知識や視点を持っているか否かで、論文の書きやすさや洞察の鋭さが段違いに変わってくることに気づきました。
経営工学を志すかどうかは別として、他の部門を極めたい方でも経営工学のこれらの手法や視点を学ぶことは超強力な武器になります。
経営工学関連のキーワードには、深い洞察と広い視野を与えてくれるものが多くあります。
経営工学とは、「様々なリソースのを総合したシステムの設計・改善・確立に関する活動」と言えますので、その性質からすれば当然ですね。
経営工学部門で受験するとか、合格するか否かはともかく、他の多くの部門を志す方でも一度はサラっとでもかじってみる価値が間違いなくありますよ。
キーワード学習のすゝめ
技術士二次試験対策としてはもとより、あらゆる資格試験対策や学問を修める上で、キーワードを整理して、定義・特徴・背景・原理・活用場面などの周辺知識を固めていく作業はベーシックな学習法ですよね。
とかく、技術士二次試験対策としてもキーワード学習は大変重要な要素でもあります。
その理由として、技術士二次試験は論述式であることが挙げられます。
マークシート式、あるいはただ単語を書くだけの問題であれば、何となくの知識でも対応できるでしょう。
一方、論述式である技術士二次試験では、「浅い知識」「言葉の意味は分かるけど、原理や活用場面は分からない」などといった状況では太刀打ちできません。
言葉の定義のみならず、原理・特徴・適用例・問題点とその対策など、1つのキーワードから派生する連鎖的な知識が要求されます。
また、そのような周辺情報を引き出せるようにしておくことで、普段の仕事や生活面においても使える知識になっていると感じる機会も増えてきますよ。
このような理由から、キーワード学習はとても重要かつ有用となります!
キーワードのまとめ方
キーワード学習は、「キーワード集の作成」によって進めていきます。
効果的なキーワード集の作成を行うには型を決めてしまうのが効率的です。
詳しくは下記の記事も参考にしてください。
要点をここでも簡単に触れておきます。
「キーワード学習を進める」ということは、「キーワード集を作成する」ということにほぼ等しいです。
漫然と覚えたいキーワードをインターネットや参考文献で調べて、「あっ そういうことか」と満足してしまっては、試験本番で使える知識にはなりません。
では、どのような点に気を付けてキーワードをまとめていか。
以下の項目に沿ってまとめるといいでしょう。
- 1)キーワード名
- 2)開発された時期・背景
- 3)原理と特徴
- 4)問題点
- 5)解決策
- 6)応用例
- 7)今後の展望
これらの項目はあくまで目安ですので、全キーワードについてこれらの視点で完璧にまとめ上げる必要はありません。
しかし、できる限り上記の項目に沿ってまとめていくと、
- 多面的な視点が養われる
- 他のキーワードとの有機的なつながりが出てくる
- 技術士二次試験の出題に直接沿った対策となる
これらのメリットがあります。
様々な情報源にアクセスしないと、全項目をまとめるのは難しいかもしれませんが、一度まとめてしまうと強力な武器になります。
少々手間ですが、ぜひぜひキーワード集を作成していきましょう!
技術士二次試験対策のためのキーワード抽出法
技術士二次試験対策を行うに当たっては、過去問を中心にキーワードを抽出しましょう。
過去問は日本技術士会のHPにアップされています。
令和元年度試験~令和4年度試験について、キーワードについてざっと抜き出したページを用意しました。
こちらの記事を参照してください。
最新のものについては、日本技術士会HPにアクセスしてチェックしてみて下さいね。
大事なこととして、キーワードを1つ決めては調べてまとめる、別のキーワードを決め手は調べてまとめる、といったことをしないことです。
まずは、とにかく数多くのキーワードを過去問から抽出しましょう。
学習しなければならない範囲は広く、勉強した内容が必ず試験に出るわけではありません。
一つ一つシラミツブシに、全体も見えない中で調べてまとめ上げるのはとても非効率です。
まず、経営工学全体を取り巻くキーワードを概観するためにも数年分、キーワードを拾い上げましょう。
もちろん、意味なんてわからなくて大丈夫です!
とにかく、過去問から列挙していきます。
過去数年分の二次試験問題から抽出したら、一次試験の過去問題からも抽出してみてもいいでしょう。
メモ書き、箇条書きでいいのでまずは抜き出す、これが肝心です。
キーワードのグルーピングと紐づけ
ある程度の量のキーワード抽出が出来たら、言葉の定義や意味程度から調べ始めるといいでしょう。
特徴や応用例まで調べなくても、イメージくらいは掴めるはずです。
そこまできたら、キーワード間の共通項を軸にグルーピングしてみるといいでしょう。
このテクニックを認知心理学などでは「チャンキング」と言ったりします。
“チャンク”とは”かたまり”を意味します。
将棋の棋士がコマの配置を圧倒的な記憶力で覚えていられる秘密もチャンキングにあることが研究で分かっています。
このテクニックをキーワード学習に応用します。
例えば、
「SCMはサプライチェーンに関するマネジメント手法。物の供給連鎖、つまり『物流』との関連が深いな」
など、1つ上位の階層の用語との関連を見つけます。
これは品質管理などの場面でよく使う手法で、新QC7つ道具でもある、「連関図法」そのものです。
連関図法やQC7つ道具についての詳細は下記の記事を参照してください。
連関図法のようにキーワード間の”つながり”や”まとまり”が見えてくると格段に記憶に残りやすくなるばかりでなく、引き出しやすくなります。
そのキーワードに関連した記憶をより強固なものにするのに最強のツールが『マインドマップ』です。
マインドマップについては次に説明します。
マインドマップを活用しよう
経営工学のキーワード学習を進めるに当たり、私が作ったマインドマップを紹介します。
が、そもそも
「マインドマップって何?」
という方、まずはこちらの記事を参照してください。
簡単に言うと、「脳内の記憶イメージを可視化したもの」です。
同じように記憶していても、人によって理解の仕方や脳の構造が異なります。
何が正解というものはありません。
ですので、マインドマップは自身で作ってこそ、その真価を発揮します。
ですが、せっかくこのブログを読んでくださっている方には、私が作ったマインドマップをお見せしますので、ぜひぜひご参考に!
ただ、ワードの分類の仕方など、細かいところは誤りがあるかもしれません。
あくまで、私が記憶しやすいと思う形でグルーピングしているという点、ご了承くださいね!
もちろん、キーワードというものは正確に、あるいはしゃくし定規に、選り分けられるものではありません。
重複が生じたり、視点によって分類方法が変わります。
是非、ご自身が分類しやすい仕分けの軸で、様々な角度から自由に作ってみることをおすすめします!
経営工学を学ぶ上でのオススメの参考書
技術士二次試験の経営工学部門の対策をする上でのオススメの参考書を紹介する前に、まず前提条件をお示しします。
- 前提①:参考書だけでは不十分
- 前提②:それでも参考書は重要
- 前提③:インターネットも大いに活用する
- 前提④:勉強内容は、選択科目(生産・物流マネジメント or サービスマネジメント)のうちどちらを選んでもほぼ変わらない
この3つを念頭に置く必要があります。
なぜかというと、誤解を恐れずに言うと、
「経営工学を網羅的かつ詳細にまとめた良書はほとんどない」
というということに帰着します。
ここまで断言してしまうと、経営工学関連の書籍の著者様や専門に研究されている方などに怒られそうですが、よくよく考えれば致し方のない事です。
経営工学の歴史は他の学問より浅く、アメリカの技術者フレデリック・テイラー(1856-1915年)が提唱した作業方法と管理の客観化・合理化を図ろうと提唱した「科学的管理法」に端を発すると言われています。
一方で、例えば金属学の歴史はいつまでさかのぼると起源が見えてくるでしょうか。
- 紀元前6000年:中東で銅の精錬が開始される
- 紀元前3000年:中東で銅と錫の合金である青銅が開発される(青銅器時代の幕開け)
- 紀元前1190年:製鉄技術が各国に広まり鉄器時代の幕開け
などなど。
金属学はあまりに古く、長い歴史があることに改めて驚愕しますね。
今もなお、精銅や製鉄といった技術は使用されており私たちの生活を支える重要な工業技術なわけです。
そりゃ、参考書も多く存在するのはうなずける話ですよね。
話を元に戻すと、経営工学は比較的新しい学問であり、まだまだ発展途上です。
参考書が少ない代わりに、インターネットやビジネス雑誌などでは経営工学に関連する新しいキーワードがどんどん出てきます。
またそのようなキーワードをネタにした技術士試験としての出題も珍しくありません。
参考書以外の情報リソースを活用しなければならい理由も分かりますよね。
では、なぜ参考書が大事なのか。
インターネットやビジネス雑誌の情報は玉石混交。
良質な情報も誤った情報もごちゃまぜです。
ネット一本だよりの学習には相応のリスクが伴います。
ですが、参考書によって学問としてのベースをある程度固めておくことで、良質な情報と誤った情報をかぎ分ける嗅覚は鍛えられます。
そのような観点からも、まずは参考書をざっとながめて学習することを強くお勧めします。
さらに、技術士二次試験においては選択科目として
- 生産・物流マネジメント
- サービスマネジメント
の2つから予め選択した科目で受験することになります。
しかし、先ほどの説明の通り経営工学自体が成熟しきった学問分野ではなくいずれも発展途上という事に加え、
「生産・物流マネジメントとサービスマネジメントは共通項が多く、完全に分離しきれるものではない」
という特徴からどちらかを選択したからと言って、もう一方を全く勉強しなくてもいいというわけではありません。
というより、どちらかの選択科目を勉強していくうちに、もう一方を勉強せざるを得ないというのが現実的なところです。
実際に過去問を見てもどちらの科目で出題してもよさそうな問題が多いことに気づきます。
ですので、どちらを選択するにせよ、以下の参考書に目を通していただくといいでしょう。
それでは、実際に使った参考書を3冊紹介します。
1冊目はこちら。
著書名:「すぐに役立つ生産管理の基本としくみ」
著者:田島悟 氏
生産管理とその周辺知識が体系的にわかりやすくまとめられています。
ページ数も多くなく読みやすいのが特徴です。
キーワードごとにページを区切って、分量を一定に整理してくれていますので、まさにキーワード学習にはもってこいです。
「生産管理(生産マネジメント)ってこういう要素で構成されているんだな」を骨格を固めるにはこの1冊で十分でしょう。
ただし、必要なキーワード全てはカバーできていない事、説明が十分でない箇所もありますので、ネット検索などでカバーすることはお忘れなく!
2冊目はこちら、
著書名:「サービスマネジメント入門」
著者:近藤隆雄 氏
こちらは、1冊目に紹介した本と異なり、キーワード本というよりは、
「サービスとは、サービスマネジメントとはなんぞや」
ということを、
- サービスの本質
- モノ製品と比較した場合の特徴
- サービスの価値や社会的位置づけ
このような視点で章立てでまとめられた読み物といった本になります。
要所要所でキーワードが登場しますが、キーワードそのものを解説する本ではありません。
ですので、この本の使い方としては、
・サービスマネジメントの本質を理解する
・サービスマネジメントを取り巻くキーワードを拾って抽出
・モノ(製品)ではない商品としてのサービスってこういうものだな、と理解する
といった感じです。
やはり、インターネット検索での知識の補充は必須であることは間違いありません。
しかし、この1冊を読んだ前と後では、キーワードを学習する上での理解度が異なりますので是非お勧めしたい1冊です!
まとめ
いかがでだったでしょうか。
経営工学は、比較的新しい学問分であることと、経営工学を学べる大学や機会はさほど多くない一方で、ものづくり産業やサービス業に従事する方であれば多くの方に学ぶ価値のある分野です。
技術士試験においても2部門目、3部門目などに挑戦するにもとっつきやすく、合否はともかくとして、その汎用性の高さから勉強するだけでも即仕事に生きてくる分野だと確信しています。
これから、経営工学関連のキーワードの記事を上げていきますが、そのとっかかりとしてこの記事をまとめました。
さいごに、簡単におさらいしましょう。
-
- はじめに
技術士二次試験(経営工学部門)の対策を行った備忘録として、キーワード集を中心にまとめていきます。
ぜひ、関連記事を参考に、みなさんも学習を効率的に進めてみて下さい。
-
- 経営工学のキーワードってとっても便利!?
経営工学のキーワードは、一言で言うと「多面的」さを与えてくれます。
様々なリソースを駆使して、様々な問題を解決する手法を体系化したものが経営工学といっても過言ではないわけです。
そのような背景を理解していると、うなずける話ですね!
-
- キーワード学習のすゝめ
キーワード学習は単なる単語の意味や定義を覚える、そのようなものではありません。
キーワードを取り巻く関連情報や、他のキーワードと有機的なつながりを意識して学習することが効果的です。
-
- キーワードのまとめ方
キーワード学習はキーワード集の作成が効果的。
1)キーワード名
2)開発された時期・背景
3)原理と特徴
4)問題点
5)解決策
6)応用例
7)今後の展望
この内容で整理すると、技術士二次試験対策としてはもとより、あらゆる実践の場で即使えるものになりますよ。
-
- 技術士二次試験対策のためのキーワード抽出法
キーワードは過去問から抽出します。
数年分の二次試験の過去問から抽出したら、一次試験からも抽出してみるといいでしょう!
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- キーワードのグルーピングと紐づけ
キーワードは関連性を見つけて、「まとまり」として覚えると格段に記憶力がアップします。
認知心理学の「チャンキング」、品質管理の「連関図法」、一般的に使われている「マインドマップ」などを駆使して効率的にキーワードを覚えましょう。
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- マインドマップを活用しよう
キーワードをまとめて覚えるのに特におすすめしたいのが「マインドマップ」です。
脳内でニューロンとシナプスで情報伝達が行われているかのようなイメ―ジでキーワードをまとめていきましょう。
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- 経営工学を学ぶ上でのオススメの参考書
経営工学は他の工学系の学問う分野より歴史が浅いというのが事実。
その分情報のアップデートも速いです。
そんな中でも、「生産マネジメント」と「サービスマネジメント」という2つの視点から、私が大変参考にした良書をご紹介。
これらを一読しておくことで、新たなキーワードを増やすにもスムーズに学習が進みます。
1冊目はこちら。
著書名:「すぐに役立つ生産管理の基本としくみ」
著者:田島悟 氏
2冊目はこちら、
著書名:「サービスマネジメント入門」
著者:近藤隆雄 氏
本記事は以上となります。
キーワードページは随時増やしていく予定ですのでチェックしてくださいね!
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