【経営工学キーワード】混流生産

経営工学
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はじめに

経営工学に関連したキーワードを学習していて気付いたことがあります。

「多面的な視点が養われ、汎用性がめちゃ高い!」
「技術士二次試験の経営工学部門に限らず、多くの部門に応用可能な知識や方法論が満載!」

ということで、技術士二次試験(経営工学部門)の対策をしている時にまとめてきたキーワード集をほとんどそのままご紹介!
本経営工学キーワードシリーズの記事の特徴として、ある1つのキーワードをについて

  1. キーワード名
  2. キーワードを取り巻く背景
  3. 原理と特徴
  4. 問題点
  5. 解決策
  6. 応用例
  7. 今後の展望

これらのような、あるいはこれらに近い視点でまとめています。
これはそのまま、技術士二次試験対策に直結するまとめ方です。

このシリーズの記事は次のような方にオススメです!

  • 技術士二次試験(経営工学部門)受験予定の方
  • 技術士二次試験(経営工学部門以外)の受験予定の方
  • 技術士に興味はないけど、経営工学を勉強したい方

ぜひ、それぞれの目的に合わせて勉強にもお役立てください!

キーワード名

混流生産

言葉の定義および特徴

〇混流生産とは
混流生産は、異なる種類の製品を同一ラインで生産する生産方式。
1種類の製品を1つのラインで大量生産する従来の生産方式と一線を画す生産方式。
機械による自動化がメインな従来の生産方式に対し、混流生産は人手に大きく依存する生産方式と言える。

また、混流生産には「ロット混入生産」と「混流1個流し生産」の2種類がある。

  • ロット混流生産
  • 複数の製品をロット単位で生産ラインに流す生産方式。
    需要量が少ない複数種類の製品を製造予算を抑えて生産するのに適する。

  • 混流1個流し生産
  • 顧客ごとに異なる仕様の製品が1個ずつ生産ラインに流れる生産方式。
    作業者が1個ずつ品質を確認しながら次工程に流すため、不良品が発生しにくい。
    結果、仕掛品の発生率が少なく、管理のための労務費が削減できる。

〇特徴
特徴として、混流生産は、高い生産性を維持しながら、複数の専用製品を作るため、生産ラインを手動で頻繁に切り替える必要がある。
加えて円滑な生産ラインの切り替えは、作業者や管理者の技術が重要です。
この点、作業者を含む運用者の高度な技術を必要とする生産方式と言える。

メリット

〇生産効率の向上
混流生産は、生産ラインの切り替えが必要な点で工数が多いものの、使用する生産ラインが少ないため、工場の稼働率、ならびに生産効率を向上させるメリットがあります。

例えば、情報通信機器メーカーの沖電気工業は混流生産を行い、生産ライン数を2分の1に削減させた。
さらに緻密な生産シミュレーション、部品切り替え手法を徹底した結果、生産効率を1.5倍に向上させた。

〇生産コストの削減
少量多品種生産の1つである混流生産は、製品単位(ロット)を大きくすればするほど、生産コストを削減できる傾向がある。
 
また、混流生産は、複数の製品を並行して生産できるため、完成品の在庫や保管スペースを大幅に減らし、生産コストを削減できるメリットもある。

〇多様な顧客ニーズへ対応可能
混流生産は、顧客ごとにカスタマイズしたオーダーメード製品を大量生産するため、多様な顧客ニーズへの対応が可能。
 
例えば、混流生産を取り入れるメーカーは、作業者の裁量が大きい特性を生かし、市場や顧客に対応した急な仕様の調整、変更を行っているほか、生産対象品の生産計画量に応じて生産量をコントロールできる。

問題点・デメリット

〇生産ラインの切り替えに伴う作業工数の生産性の低下
個別の製品に対応した金型、治工具への交換などの段取りが多くなると生産性が低下する。

〇自動化が難しく、属人性が高い
生産ラインの切り替えは工数が多い上に、一定以上の技能を要する。
また細かな手作業を要する場合が多く、自動化が難しい。
メリットとして挙げた生産性の向上は、作業者の技能があってこそであり属人性が排除しきれない。

〇作業者の技能伝承と教育
技能を有する作業者という、ヒトに依存せざるを得ない要素の生産方式であり、技能者の育成に時間やコストがかる。
また、勘や経験といった標準化・定量化が難しい技能を伝承することが課題となる。

解決策

〇内段取りの外段取り化
ライン切り替え上必須となってしまう段取りについて、製造ラインの稼働を止めることなく進められる外段取り化を図る。
機械の稼働率を上げつつ、段取りそのものの負荷を軽減させるための治工具や作業スペースのレイアウトに工夫を凝らす。

〇技能者の暗黙知を形式知化
技能レベルの高い作業者とそうでない作業者の動作分析や時間研究などを行い各工程における作業の標準化を図る。
また、IoT技術を活用し温度や圧力などの製造パラメータの数値化や装置の稼働状況のモニタリング・データ化を図る。
得られたデータから、簡素化・標準化を行い、属人性を排除した作業工程の設計を行う。
 
〇ロボット技術の活用
作業者の全工程は難しくても、ロボットに代替できる作業はないか検討する。
ロボットアームやセンサー技術、AIなどが進歩していることなどから、ヒトでないとできないとされていた作業の自動化・機械化の可能性を見出す。

応用例

〇トヨタ自動車
国内の主力完成車の組立工場を世界最先端の混流生産設備に改良し、海外輸出に対応した増産体制を構築。
愛知県豊田市の高岡工場では、樹脂製バンパーの射出成形ラインなどに混流1個流し生産のラインを導入した。
 
組立ての各工程間に処理速度の差を埋めるバッファー(緩衝装置)を置き、製品のグレード差や工数差で生じる問題の解消に努めながら、混流生産を推し進めた。

これらの結果、樹脂製バンパーの製造において加熱によって溶けた合成樹脂などの材料を金型に流しこむ工程と、冷やして成形する工程のタクトタイム(作業時間)が従来比の半分に縮減し、仕掛品や工場内の余剰スペースも削減した。

〇日産自動車
日産自動車は、IBS(Intelligent Body assembly System)と呼ばれる車体の製造システムを導入し、複数の車種製造に対応する混流の汎用ラインを導入した。
神奈川県の湘南工場は2000年代から、車両組立と塗装、車両組立の3工程に混流生産を取り入れ、商用車や乗用車といった多種多様な車体の製造を1つのラインを行っている。
  
生産計画通りの順序や時間の管理を促す日産生産方式や、作業の平準化を可能にするモジュール化などの具体的方策を実施しながら、高効率の生産体制を構築。

2019年には、混流生産の一種で、エンジンやバッテリーの組み立て作業を、全自動化する「パワートレイン一括搭載システム」を導入。

電気自動車やガソリン車、ハイブリッド車など異なるパワートレインの車を、1つの生産ラインで作るシステムを構築している。

〇マツダ
業界4位のマツダは、競争力向上のために、古くから混流生産を取り入れ、目まぐるしい市場の変化に対応してきた。
同社は、複数の車種を1台単位で生産する順番を決めて、工場ではその通りにクルマを作るほか、部品メーカーの工場も同期して順番通りに部品を生産納入する「計画順序生産」の形式で混流生産を実施している。

これにより、顧客が発生した順に製品を生産することを可能にし、精度の高い短納期を実現しています。

また、モータリゼーションの時代に入った1960年代に混流生産の技術を確立しました。

今後の展望

混流生産は、顧客や市場の要請に応えやすいという点で現代の製造業界に合った生産方式だといえる。
現状保有する生産ラインをフルに活用するため、投資抑制にもつながると考えられる。

しかし、生産ラインの切り替えなどで人手に依存する以上、製造設計や作業手順の標準化といった間接作業にかかる負担は膨大となる。
作業の効率化を図るためにも、現場の管理者が高度かつ精緻な知識を持つことは必須と言える。

参考

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