【経営工学キーワード】部門間連携強化

経営工学
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はじめに

経営工学に関連したキーワードを学習していて気付いたことがあります。

「多面的な視点が養われ、汎用性がめちゃ高い!」
「技術士二次試験の経営工学部門に限らず、多くの部門に応用可能な知識や方法論が満載!」

ということで、技術士二次試験(経営工学部門)の対策をしている時にまとめてきたキーワード集をほとんどそのままご紹介!
本経営工学キーワードシリーズの記事の特徴として、ある1つのキーワードをについて

  1. キーワード名
  2. キーワードを取り巻く背景
  3. 原理と特徴
  4. 問題点
  5. 解決策
  6. 応用例
  7. 今後の展望

これらのような、あるいはこれらに近い視点でまとめています。
これはそのまま、技術士二次試験対策に直結するまとめ方です。

このシリーズの記事は次のような方にオススメです!

キーワード名

部門間連携強化

なぜ部門間連携が必要なのか

「部門間の連携を良好にし、商品の質を向上させたい」
「部門間連携を強化するため色々と試してはいるが、なかなか効果が出ない。何か良い方法はないのか…?」
と悩んでいる経営者や管理職は多く、部門間の連携を行いながら業務を進めるケースは多々ある一方、その連携が良くない事例は多くあるのが実情である。

部門間の連携が改善することによって新たなアイディアが生まれたり、既存の製品・サービスの質が向上したりと、組織にとって様々なメリットがある。
できることなら連携をさらに強化し、組織の成長を促進することが望ましい。

部門間連携強化のメリット

①組織力の強化
1人の人間でできることには限りがあるのと同様、1つの部門でできることにも限りがある。
同じような能力や情報ソースしか持ち合わせないチームでは解決できない事でも、他のチームのリソースと組み合わせることで解決できるケースは多々ある。
部門間の連携を強化することで組織全体の問題解決力の向上につながることは想像するに難くない。

②組織の一体感の醸成
同じ組織に属していても、各々の役割と立場で価値観や志向の方向性にはバイアスが生じる。
例えば、営業部門では「より安価な価格で商品を提供したい」と考えていても、製造部門では「高品質の商品に改良したい」と考えることがあるだろう。
どちらも間違いではないものの、方針のベクトルにズレが生じていては新しいアイデアも実現せずに埋もれてしまう。
何に価値を置いて、どのような優先順位で組織が動いているかコンセンサスを取ることで、連携が強化され一体感が増す。

③生産性の向上
部門間の連携が乏しく、リソース(人・設備・物・情報)が共有されていないと著しく生産性を低下させる要因となる。
例えば、製造部門ではラインの稼働がマンパワーにより律速されており生産が一部滞っているような場面において、品質管理部門から手の空いている者がヘルプ要員が入ることで円滑に回る場合があるだろう。
一見単純な事ではあるが、部門間の連携が不足している状況では容易に起こり得ることで、生産性に大きな影響を与えていることは少なくない。

④業績の向上
①~③の総まとめにはなるが、業績の向上が最たるメリットと言っていいだろう。
組織全体を俯瞰した際に、各部門は組織を運営し業績を上げるための一定の機能を担っているに過ぎない。
部分最適化の視点だけでは、業績向上は頭打ちに合う。
部門間の連携を強化することで全体最適化が図られ、業績の向上もさらに高みを目指すことが可能となる。

部門間連携を阻む要因

①相互理解ができていない
部門ごとに考えていることや目標としていること、課題が違うのは当たり前という前提をしっかり認識することがまずは重要。
よって部門間連携では相互理解が不可欠であるが、コミュニケーションの不足等によりそうした理解が十分でない場合、互いに誤解を招き、部門間での対立を引き起こす可能性が高くなる。
他部門のミッションや価値観がわからず、自分たちのそれも相手に伝わっていなければ、行き違いが生じるのは当然と言えば当然である。

②相手部門の能力・人手不足
最近では、企業間の合併なども多く、互いの部門の能力に差がある場合もある。
また、そもそも他部門の認識以上に、相手部門のリソースが十分でない状態が慢性化している組織もあるだろう。
人手が足りないことで部門間のバランスがうまく取れなくなり、それが対立を生む原因となることもある。

③部門を連携させる能力を持つ人(コネクター)が不在
部長など、部門をまとめるトップが連携に消極的など、部門をつなく能力を持つ人がいないことも、対立の原因になる。
全ての管理職が周りを巻き込んでいくような力強いタイプである必要はないが、部門間連携のように、難易度が高く上に立つ人間が率先してコミュニケーションをとっていく必要性は生じる。
その場合、少々強引でも周りのスタッフに働きかけるパワーが要求される。

④部門間の連携を阻む制度や風土がある
強固な縦割り型組織の場合、なかなか横のつながりを持つことができない。
また、商品の研究・開発部門等は、新しい技術や特許等の事前漏えい防止策として、他部門とのコミュニケーションを控えるようにしている場合もある。
人事等の個人情報を扱う部署も同様。
他部署同士のコミュニケーションが取りにくい、もしくは推奨されない制度がある場合、そうしたことも部門間連携を困難にする原因の一つとなることは認識しておかなくてはならない。

⑤過去に連携が失敗した時の感情的わだかまりが残っている
設立してまもない会社でない限り、一度や二度は部門間で連携を試みているケースは多いはず。
しかし何度か挑戦したが上手くいかず、なんとなくの「気まずさ」だけが残ってしまうと、それも積極的な部門間連携を阻む原因となる。
一度失敗しているものに再度挑戦するのは気が重いので、なんとか業務が回っているならそのままでいいと放置してしまいがちになる。

解決策

①部門間でコミュニケーションを増やす施策を実施する
まず最初にしなくてはならないのは、部門間でコミュニケーションを増やすことが大切。
すでに敵対してしまっているような場合は、改めてコミュニケーションを取ることは気まずいことも多く、合同でミーティングを開いても、最初はあまりコミュニケーション生まれない可能性がある。

それでも「膿を出す」気持ちで、コミュニケーションを増やすという割り切りが重要。
ある程度、お互いの思いが共有できるようになるまでは、時間を決めて週に何回か定期ミーティングを行うなど、顔を合わせる頻度を高くすることが効果的である。

小規模な会社の場合は、部門関係なく定期的に座る席をシャッフルするなどして、コミュニケーションの活性化を図るという方法もある。

②部門間連携を阻んでいる社内の制度改革を行う
縦の繋がりは強いが、横の組織・部門間の接点がなかなか作りづらい、支社や拠点が各地に分散しており、物理的に顔を合わせる機会が少ないなど、社内の組織構成が部門間の連携を阻んでいるケースがある。
こういった場合には、年に数回、組織・部門等関係なくフラットな状態で参加できる全社イベントを開催したり、社員旅行に行くなどして、フラットでオープンなコミュニケーションを育むのが効果的。

③部門間で利害が一致するポイントをはっきりさせる
コミュニケーション量が増え、互いの思いが共有できるようになったら、部門間で利害が一致するポイントを探っていく。
利害が一致していないことが、部門間が対立してしまう大きな原因。

たとえば、営業部門は売上を上げることが最大の目標となりますが、後方支援を行う部署の負担は増える。
伝票処理等を行う事務方からしたら、売上アップは喜ばしいことだと理解していても、連日の深夜残業となれば、やはり営業部門に対して不平不満が出てしまうのは当然のこと。

こういったケースも、しっかりと部門間で連携しておけば、年間を通した売上の計画に合わせて、後方支援スタッフの数を季節ごとに増減するなどの対応ができる。
部門間連携の課題を明確化すれば、互いがアイデアを出し合い、残務処理を効率化させるより画期的なアイデアが出るかもしれない。

④ナレッジマネジメント(情報共有)
必要な情報が共有されず、不必要な情報が多い場合、コミュニケーションや業務効率化を阻害することになる。
情報・知識の共有化における以下のステップを押さえて実施する必要がある。

ステップ1)共有に必要な情報を明確にする

  • 必要な情報:スケジュール、タスク、顧客情報、発送状況、進捗状況、トラブルetc.
  • 不要な情報:プライベートな事、既に共有した情報、個人的意見、経営情報

ステップ2)共有手段の決定

  • チャット
  • 情報を伝えたい相手に、チャットツールで文章を送る方法。
    文章だけでなく画像や映像、その他ファイルの共有も可能。
    後で確認しやすいうえ、リアルタイムにやり取りしやすいのも特徴。

  • ナレッジマネジメントツール
  • 人材や部署に蓄積された、有益な情報や知識を共有するのに有効なツール。
    社内Wikiなど、社内のメンバーが知識データベースや質問の投稿などをできる仕組みもある。
    FAQやファイル共有、情報検索などの機能を持つ。

  • タスク管理ツール
  • タスク管理ツールは、プロジェクトの進捗状況を管理するITツール。
    このツールにアクセスすれば、終わったタスクや残っているタスクを一目で確認できる。
    グループウェアにより、メンバーのスケジュールや会議室予約など組織内の設備を含めトータルで情報管理・共有できるツールもある。

  • SFA・CRM
  • SFA(Sales Force Automation)は営業支援ツール、CRM(Costomer Relationship Management)は顧客管理ツール。
    どちらも営業活動をするうえでの情報共有に役立つ。
    たとえば、顧客との商談履歴やアポイントメントの管理ができる。

 
ステップ3)情報共有のルールを策定・周知する
最後に行わなければならないのが、共有ルールの策定。
ルールが定まっていなければ、共有された情報を適切に扱えない。
   
たとえば、Aさんは営業報告をメールで送ってくるのに、Bさんは共有ツールに直接アップする…というやり方では混乱が生じる。
どこに何が保存されているのか分からなくなり、後で確認するのが手間が生じるようでは本末転倒。

そのため、「いつ」「誰が」「どのタイミングで」など、情報共有についてルールを定めなければならない。
ルールが明確になるだけで余計な確認の手間がなくなり、企業全体の生産性が向上する。

上記のナレッジマネジメントを進める上でのポイントを2点挙げる。

ポイント1)目的を明確にする
情報の共有化を図ったが、雑多な情報が増えるばかりで活用できなかったという事例も多い。
このような失敗をしないために必要なのが、目的の明確化。

トラブルの情報を共有するのはなぜ必要か。
基本的には、同じトラブルが生じた際の対処を容易にするためと言える。
したがって、すでに共有されているトラブルの事例を再度共有する必要ない。
むしろ、余計な情報が増えて必要な情報を探す際の邪魔になる可能性がある。

このように、目的を明確化すれば共有すべきかどうかの判断が可能になり、必要な情報だけを蓄積できる。

ポイント2)情報共有されやすい雰囲気を作る
情報の共有は、自発的に行われるべきもの。
全社員が積極的に情報共有に取り組むことで、有益な情報が蓄積される。

そこで必要になるのが、情報共有をしやすい雰囲気づくり。
「こんなことを共有してよいのか」「今はタイミングが悪いのではないか」といった懸念を払拭する環境を整える。

具体的には、いつ何をどのように共有するのかを明確化する。
そして、積極的に情報を提供してくれた人にはインセンティブを付与するなどし、動機付けを行う。
この繰り返しによりモチベーションを高めれば、自然と情報が共有されるようになる。

適用例

〇某食品メーカーのフリーアドレス制
7期連続で最高益を更新するなど、その目覚ましい業績が注目されているカルビーは、固定席を持たずに仕事をするフリーアドレス制を2010年の本社移転に伴い全面導入。
その際、毎日の席決めをダーツ(ランダムに席を指定するシステム)によって行うという大胆なシステムを採用している。
席種は3種類で、「コミュニケーション席」という間仕切りなしのスペース、「ソロ席」という目線より低い間仕切りがある席、「集中席」という窓際の隔離席がある。

自分のPCから専用サイトで検索すれば、誰がどこにいるか一目で分かるようになっている。
さらに一人ひとりに携帯電話が付与されているので、電話をすればすぐに捕まえることができる仕組みとなっている。

また、荷物はすべて個人に割り当てられたキャビネットに収納するようになっている。
これにより机の上が書類の山になることも防げて一石二鳥。

〇某通信業の会社が懇親会費を負担する制度
Know Meは、他部署で、過去に飲んだことがないメンバーと、3名の飲み会の費用に対し、会社から一定金額の補助が出る制度。
「飲み」「(直訳で)私を知る」というワードからネーミング。

お酒を飲まないメンバーも利用できる制度で、社内でも「今度Know Me行きましょう」と、会話のきっかけとしても、よく活用される。
これも、メンバーが制度名を覚えやすく、口にしやすいキャッチーな制度名であることを意識。

〇某ソリューションサービス業のナレッジマネジメントの取り組み
「製品開発プロセスの遅れ」を契機として、ナレッジマネジメントを推進する取り組みを始めた。
この背景には、「製品開発の最終段階で設計変更が発生し、製品開発が延期になる」という問題があった。
後半の工程を担当する社員は、製品がほとんど完成している段階でしか意見を出せないといった非効率さを生んでいた。

課題の克服には製品設計の初期段階で全担当者が持つ情報を共有する必要があったため、「全員設計」を掲げて独自の情報共有システムを導入した。 
同社の情報共有システムには設計者や技術者のナレッジが蓄積されており、各工程の担当者が有効活用できるようになった。
 
その結果、ナレッジマネジメントによって、製品開発プロセスの改善や各製造過程における業務効率化を実現した。
 

今後の展望

昨今デジタル化、SNS、オンライン会議などでコミュニケーションを取る機会が増えてきている。
さらに、情報共有ツールも様々なものがあり、そもそも特定の誰かに連絡を取らなくても業務が進むようなシステムを導入する組織も多くなっている。

そのような中で、直接対話することでしか伝わらないニュアンスが欠落した情報しか共有されなかったり、表情や声から感情を読み取って行うコミュニケーション能力が育みにくい環境であるとも指摘できる。

個人間・部門間で連携がうまく取れずに生産性が低下している現状を打破する上でナレッジマネジメントや情報共有ツールは有力であるものの、あくまで補助的な役割として認識する必要がある。
そのようなツールをうまく使いながらも、連携がうまく図れるような雰囲気づくりや仕組み作りは、組織として永遠の課題として設定し、その時代に合った方法で取り組んでいくことが望ましい。

参考

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