【技術士】二次試験 筆記試験で使える文章術|説得力・思考力・納得感を爆上げ!

技術士試験【全部門】
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はじめに|技術士試験二次試験筆記試験にテクニックは存在するのか


結論としては、「”手っ取り早く合格できるテクニックはない”と考えて対策するのが得策」ということです。
ちょっと、というかかなり残念でしょうか。
でも、ありそうでなさそうな小手先のテクニックを追い求めるより、初めから「そんなものない」と割り切って勉強をスタートさせるタイミングを早められるチャンスをつかんだ皆さんはラッキーですよ。

受験や資格試験において、よく”テクニック”が知りたい、そう思ったこと何度もありますよね。
大学の単位や、職場の命令で取らなければならい必置資格など、皆さんそれぞれ受験経験がおありでしょう。
確かにそれらにはテクニックが存在します。
そして、受験した先はともあれ、とにかく合格することに意義がある、そんな試験においては真面目に理解した上で合格するよりテクニックでとっとと合格した方がはるかに効率的と言える試験も多くあります。
そのような試験においては、ある程度お金をかけてでもテクニックを教えもらう方が得策です。
テクニック先行で対応するのが望ましいのはこんな感覚を覚える試験です。

・設問の意図はいまひとつ理解できないけど、解答はできる
・理由はよく分からないけど、正解はわかる
・何故なら、テクニックがわかっているから

しかし、技術士二次試験筆記試験はそうはいきません。
その最たる理由は、「論述式である」ことでしょう。
人に何かを説明する際に、自分自身がその内容について十分理解していない場合はしどろもどろになります。
当然、聞き手の理解度は劇的に低下します。
それは、口頭でも筆記でも同様です。
皆さんの受験する技術部門に精通した専門家が何名かで論文を採点します。
テクニックでどうにかなるほど甘いものではないことは容易に想像できるでしょう。

テクニックは存在しないと言いましたが、文章術は存在します。
また、仮に同程度の専門知識を有する人が書いた論文であっても、その文章術を論文の中で実践している人としていない人との差は歴然です。

テクニックも文章術も同じじゃないの?と思うかもしれません。
しかし、その違いは”汎用性”にあります。
テクニックはその試験対策にしか通用しないなど、限定的スキルに留まりますが、試験対策としての効果は絶大というものです。
応用が利かず、試験合格後はそのスキルが活かしきれないというきらいがあります。

一方で、文章術は汎用性が高く、一生ものといっても過言ではありません。

よく、「技術士的ものの考え方が身についた」と合格者の声が聞かれます。
それは7つのコンピ―テンシーの総合力が一定水準以上に達したことを客観的に認められたことに他なりませんが、
筆記試験で問われる文章術を身に着けたことが「技術士的ものの考え方」を自信をもって身についたと言える重要な要素であると考えられます。
そしてその汎用的スキルは、皆さんの日常業務や他の資格取得、日常生活にも十分応用可能であるという、おまけというには余りあるメリット付きです。
是非、技術士二次試験筆記試験の対策を通して文章術を身につけましょう

その前に、まずは筆記試験の必須科目Ⅰ、選択科目Ⅱ、選択科目Ⅲすべてに共通する留意点を確認しましょう。

筆記試験共通の留意点


筆記試験には必須科目Ⅰ、選択科目Ⅱ、選択科目Ⅲと大きく3つの科目に分けられます。
さらに選択科目ⅡはⅡー1とⅡー2に分けられます。
その全てに共通する留意点を押さえておきましょう。

字数制限

筆記試験では600字詰原稿用紙を使用します。
必須問題Ⅰ~選択問題Ⅲまであり、同じ用紙を使用します。
各問題ごとに1枚問題、2枚問題、3枚問題の3パターンあります。
文字数にして、600字問題、1200字問題、1800字問題という感じです。

文字数に関して、ポイントは
8割は埋める。でもはみ出さない
ということです。

但し、あくまで指定枚数(1 or 2 or 3枚)以内に納めなくてはいけませんので、書ききれずにはみ出すとNGです。
はみ出したら不合格とは言い切れませんが、「回答用紙〇枚”以内”にまとめよ」と問われるので、はみ出した時点でどんなに優れた内容の論文でも要件を満たしていないということで、減点は免れませんので注意が必要です。

かと言って、それを恐れて7割も埋まっていない回答になってしまうようでは、それまた知識不足・説明不足と見なされ、やはり減点は免れないでしょう。

ですので、「目標8割。理想は最終行まで。」を意識して書きましょう。

いや無理無理、と思うでしょう。
持ち帰って1週間後に提出っていうなら分かるけど、試験会場その場で制限時間内にそんな文字数書ける気がしないし、しかもぴったり原稿用紙の最終行で合わせる!?絶対無理!
と私も思っていました。

でも大丈夫!
そんな自信ゼロの状態から、1年足らずの勉強期間で合格に達することができました。
大事なことは、要点を押さえて練習すること。
間違った方向にいかないために、以下の要点もチェックしてください。

配点と評価

必須科目Ⅰ(40点満点)、選択科目Ⅱ(30点満点)、選択科目Ⅲ(30点満点)それぞれについて採点され、各々ABCで評価されます。

  • A:60%以上
  • B:60%未満40%以上
  • C:40%未満

となり、必須科目及び選択科目(ⅡとⅢの合計得点)がそれぞれA評価(60%以上)で合格となります。
筆記試験終了後の合否通知ではABC評価しか明示されません。
詳細な点数は開示請求を別途行わないと教えてくれません。
合格・不合格に関わらず、今後のために開示請求をおすすめします。

例えば、合格と言っても60%ギリギリで合格か、80%など余裕をもって合格かででは、例えば別の部門にチャレンジする際や後輩などに添削指導する際などの参考度合いが変わってくるでしょう。
とはいえ、同じ論文でも試験官が異なれば当然ながら点数も変わります。
こればっかりは人間が審査する以上仕方のないことです。
そのような意味でも、60%ではなく80%(少なくとも70%)をアベレージで出せるくらい安定した論文を書く必要があります。
そのためにも知識と書き方(作法)の両輪がとても大事になりますよ。

以上のように留意点を踏まえた上で具体的な文章術を見ていきましょう。

本番で焦らないための論文作成手順


筆記試験時間は限られており、時間だけ見ると長いように思いますが、とんでもない!
試験時間はあっという間に過ぎてしまい、時間が足りません。
むしろ、時間が足りないと感じるくらいしっかり書き切らないと合格は難しいでしょう。

その限られた時間を有効に使いきるためには、予め「論文作成手順」を決めておくのが断然得策です。
そこでオススメしたいのが「簡単5Step!論述法」です。

簡単5Step論述法

  • Step1: 設問をよく読む

(問われている点、記述の条件、付加情報を混同せず正確に把握する)

  • Step2: 骨子構築

(問ごとにキーワード・論点を書き出し、簡易的なマインドマップを作成する)

※例えば、必須問題Ⅰ&選択問題Ⅲであれば、
設問1:課題1、2、3
設問2:解決策1、2、3
設問3:リスク1、2 対策1、2
設問4:技術者倫理の観点、社会の持続可能性の観点
※課題、解決策、留意点・工夫点は「4±1」のルールで(人間の処理できる情報量の限界)

  • Step3: 見出し作成

(奇をてらわず、分かりやすくい、各設問の結論ともいうべき見出しを作る)

  • Step4: 均等割付

(各設問の中に評価したいコンピテンシーが潜んでいます。不均等な割付ではコンピテンシーを十分にアピールできません)

  • Step5: 原稿用紙に書き始める&見直し修正

(上記4Stepを全て終えてからようやく書き始めます)

こんな感じです。
各Stepにどれくらい時間を割り当てるかはこちらで解説していますので参考にしてください。

【技術士】二次試験 筆記試験対策の進め方|簡単5Step!
専門書や学会誌などを読んで専門知識を詰め込むのは実は間違っていた!?簡単5Stepで進めていく技術士二次試験対策方法を伝授します!学習の進め方とその順番(優先順位)がとても大事です。

体裁を整え印象をアップさせるルール


下記のルールはもちろん日本技術士会が提示する公式のものではありません。
ですが、合格論文に仕上げるために最低限守らなければならいルールとして必須で押さえましょう。

  • タイトルに二重下線
  • 見出しに下線
  • 章が変わったら改行(黒い論文にしない)
  • 「以上」で締めくくる
  • 8割以上埋める(できれば3行以上残さない)

これらのルールを守るだけでも論文としての印象はグッと上がります。
何度も読み直しなどしてくれない試験官への最低限のおもてなしだと思って取り入れてください。

知って得する戦術


下記の戦術は、必須で取り入れるべきとまではいきません。
しかし、持っておくと確実に味方してくれる戦術です。
冒頭で示した通り、技術士論文試験に限らず他の勉強や業務でも役立つ汎用性の高い戦術でもあります。
ご自身に合ったものから取り入れて少しずつ戦術を増やしてください。

言葉の定義をはっきりさせる|問題、課題、解決策、リスク

普段何気なく使っている言葉にも「問題」「課題」「解決策」「リスク」などがあります。
そして、それらが直接技術士二次試験筆記試験でも問われます。
もしかすると、普段使っている言葉のニュアンスのまま技術士試験に臨むと大変なことになるかもしれません。
以下の通り、言葉を再定義しましょう。
ちなみに、3枚問題の対応方法でも解説と重複しますが、非常に重要なので再度見直しましょう。

問題」 :乗り越えるべき壁(ギャップ)
課題」 :問題(=壁)を乗り越えること(ギャップを埋めること)
つまり、問題と課題は表裏一体。普段混同して使用する言葉ですが、意味は真逆となります
解決策」:課題を実現するための具体的手段(ギャップを埋める手段)
リスク」:解決策を台無しにするような不確実な事象
対策」 :リスクを回避又は低減させる具体的手段(解決策とほぼ同義と捉えてOK)

上記のうち、解決策や対策の意味は特に問題ないでしょう。
一般的に理解されている意味そのものでOKです。

注意が必要なのは「問題」「課題」「リスク」の3点です。
特に、問題と課題は対比で要チェックです。

問題は乗り越える壁そのものに対して、課題はその壁を乗り越えることです。
ここで、「壁=理想と現実との”ギャップ”」です。
理想なくして問題は起こりようもないわけです。
そして、現状をその理想に近づける(ギャップを埋める)作業が課題なわけです。
この段階では、課題を遂行するための手段は指定していません。
何かしらの手段を講じてギャップを埋めることが課題なわけです。
その課題を実施するための具体的手段こそが解決策であり対策です。
つまり、「問題は解決すべきもの」、「課題は実現すべきもの」、「解決策/対策は具体的手段」です。

よくある間違いとして、
「環境問題における課題は地球温暖化です」
のような表現をよく見聞きします。
おかしい点にお気づきですよね。
地球温暖化は、まさに問題(壁、ギャップ(理想的な気温に対するプラスの温度差))なわけです。
そして、課題は地球温暖化ではなく、地球温暖化防止なわけですよね。
実際の筆記試験においても、特に「問題と課題の意味の違い」には十分留意してください。

次に、リスクです。
リスクと問題/欠点/デメリットは決定的に違いがあります
その違いとは、ある望ましくない事象がおこる”確実性”にあります。
後者に挙げた望ましくない事象はある程度確実性が高い、あるいは明らかな事実としての事象と言えます。

一方で、リスクは確実性が低い、つまり不確実な事象です。
「リスクを挙げよ」、と問われている中で明確なデメリットを提示しては、問いに答えていないことになります。
リスクを問われている以上、起こらないかもしれない、多くの人は気にもしないような事象に対しても先見の明を光らせ予見し、予防策を打つことが期待されています。

そして、自身が提示した解決策に対して、それが失敗した場合のフォローも行うことでしっかり責任を果たすことまで要求されるわけです。
それが、技術士に求められる「評価」能力です。

さらに付け加えるならば、設問の中でリスク及びその対策を記述する機会を与えてくれているわけです。
これは技術士試験の受験生には非常にラッキーなことです。
つまり、解決策が完璧なものでなくていいということです。

皆さんは、技術者や研究者として日頃の業務において完璧に近い解決策を要求される場面も少なくないでしょう。
非常にプレッシャーがかかりますよね。

例えば、”新規設備を導入する”と提案したとしましょう。
「イニシャルコストはどうなんだ?」
「ランニングコストはどうなんだ?」
「オペレータの教育はどうするんだ?」
「品質は安定するのか?」
などなど、頭を抱える問題が生じます。

でも、この技術士試験においては完璧でなくていいのです。
抜け目があっていいのです。
リスクやその対策を聞いてくれることで、わざわざそこをフォローするチャンスを与えてくれているのです。
ある意味、親切な設問設定だと考えると気楽じゃないですか?
気負いすぎず臨みましょう。

クリティカルシンキング~問題・課題・リスクの抽出に役立つ~

「クリティカルシンキング」(批判的思考)についてです。
よく対比される言葉として「ロジカルシンキング」(論理的思考)があります。
両者は対比はされるものの相反する考え方ではなく、両者を補完しあいながら行うと良い思考法です。

クリティカルシンキング:本当にその前提が正しいのか、検証したうえで本質を見極めること
ロジカルシンキング  :物事を筋道立てて、要素に分解して考えること

つまり、クリティカルシンキングは主張や現象について、その根拠を深堀することであり、
ロジカルシンキングは主張や現象について簡単には説明しきれないことを細かく分解して理論立てる点が異なります。

書籍「グロービズMBAクリティカル・シンキング」では以下の3つの基本姿勢を示しています。

『クリティカルシンキングの3つの基本姿勢』

  • 目的は何かを常に意識する
  • 自身の思考に癖があることを常に意識する
  • 問い続ける

の3つです。
仕事や日常生活にも重要な姿勢です。
以下、解説です

①目的は何かを常に意識する
完璧な現状、万能な策は基本的にはありません。
「そもそも」これって何のためにやってるの?と原点に立ち返りその意義を確認することを怠り無駄なことを繰り返していることってないですか。
儀式的な会議、委員会活動など仕事に関わることに限らず、仕事帰りに立ち寄るコンビニで買うドリンクやスイーツetc….
目的・ゴールを改めて見直し、目の前の問題に対する対症療法ではなく根本的解決を目指すことが、目的は何かを常に意識する姿勢です。

②自身に思考の癖があることを前提に考える
どんな人にも必ずと言っていいほど思い込み、偏見、価値観、暗黙のルールが意識的にも無意識的にも存在します。
それらに囚われない「他の要因」「ベターな打ち手」を客観的に考える必要があります。
推論ではなく、根拠となる事実に基づく俯瞰性、客観性をもって考えることが、自他に思考の癖があることを前提にするという姿勢です。

③問い続ける
「なぜ」と問いを重ねることで根本に辿り着く。
浅い思考で終わってしまうと、結局同じ命題に何度もぶつかり解決に至らない。
トヨタ生産方式にも「なぜなぜ分析」または「5なぜ」などというものがあり、例えば製造上の不具合や市場クレームなどに対して最低5回はなぜを繰り返して問い、根本原因を追究するというフレームワークがあります。

何か問題が生じた際、なぜと問うのは通常1回か2回くらいではないでしょうか。
最低5回はとなると根本に行きつきそうですね。
しかし、方向性を間違うと問いが逆効果にもなります。
回数も大事ですが、①の目的や②の思考の癖も十分に考慮した上での問いが重要となります。

以上のように、日ごろからクリティカルシンキングを心掛けると深く的確な洞察力と問題解決能力につながりますので実践しましょう。

「課題」は”多角的”視点で!

3枚問題の設問の(1)では”複数”の課題の提示が求められます。
ここで言う”複数”には設問中では明示されていないものの、以下の2つのニュアンスが含まれます。

  • 多角的な視点
  • 3つ以上

の2点です。
多角的な視点が要求されるのは、実務上の問題解決能力に不可欠だからです。
受験案内で示されるコンピテンシーの「問題解決能力」の定義を振り返りましょう。

[問題解決能力]
定義(受験案内参照):
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
・複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。

定義の中で「複合的な問題に対して/関して」という表現がとられています。
実際の問題が起こった場合、その問題を大枠として「1つの問題」として捉えても対応が難しいことが多いでしょう。
困難は分解せよ、ということで問題を「問題点」に分解するわけです。

課題や解決策を見出す際には「クリティカルシンキング」を紹介しましたが、それと対比させるならば、
問題 → 問題点
のプロセスは「ロジカルシンキング
と言えます。
問題点の集合体が1つの大きな問題を形成していると考えます。
その問題を構成要素に分解するわけです。

こうすることで、複数の問題点が浮かび上がり、「複合的な問題」という問題解決能力のコンピテンシーに対応した論文作成につながるわけです。

設問はコンピテンシーをアピールするためのお膳立てを全て行ってくれるように作られているわけではありません。
「この設問は問題解決能力を問いたいのだな」と予め分かっているわけですので、それに呼応した解答が必然的に求められます。

問題点が複数あるということは、課題も複数あるということになります。
前述した言葉の定義にある通り、問題と課題は表裏一体です。
複数の問題点を見出すことは、自動的に複数の課題を見出します。
よって、問題を問題点に分解する作業が結果的に3枚問題の設問(1)にある複数の課題抽出に対応し、かつコンピテンシーの1つ問題解決能力をアピールすることにつながるわけです。

それでは具体的にどのような“多角的視点”を持つといいでしょう。
問題を問題点に分解するには様々な視点がありますが、自分なりの軸を持っておかないと本番で焦ってしまいます。
予め視点となる軸を用意しておきましょう。

私は、技術士受験前に品質管理検定を受験しました。
その際に勉強したことが非常に役立ち、そのまま技術士試験にも応用しましたので紹介します。
QCD(+SE)もしくは4Mの視点」です。
ちなみに、この視点は課題抽出のみならず、リスクの洗い出しにもそのまま転用可能な高汎用性の視点ですので是非身に着けておきましょう。
以下、解説します。

「QCD(+SE)」の視点
QCDSEは英単語の頭文字です。それぞれ以下の意味です。

  • Q: Quality(品質)
  • C: Cost(コスト)
  • D: Delivery(納期)
  • S: Safety(安全性)
  • E: Environment(環境)

です。
最初の3つは、皆さんおなじみのQCDです。
品質管理においても必須で登場しますし、経営戦略などでも基本ですよね。
製造工程や顧客の要求などをQCDの観点からどの程度満足しているかを測るということはおなじみかと思います。
与えられた問題に対して品質・コスト・納期の観点でうまく問題点を抽出できれば複数の課題3つが設定できます。

ただ、必ずしも全ての問題がQCDの切り分けに馴染むとは限りません。
ですので、(+SE)も+αの武器として携えておきましょう
Safety(安全性)Environment(環境)です。
これで、万が一QCDだけで対応できない問題でも、SあるいはEで切り分けして、問題点3つ、つまり課題を3つ抽出可能となり、”複数の課題抽出”という設問に対応できます。

例えば、必須科目Ⅰでは、ある社会情勢等の背景説明の後、下記のような設問が(1)で与えられます。
”(1)金属材料を製造し、製品に加工、供給するバリューチェーンを通して持続的社会の実現に貢献していく上で、技術者としての立場で多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。”

技術士試験の勉強を始めたばかりの人など、初見では面喰いそうですよね。
QCD(+SE)の軸をもっておくだけで劇的に回答しやすくなります。
上記の設問におけるキーワードはもちろん”持続可能性”です。
「課題の抽出 ≒ 問題点の抽出」ですから、何が持続可能性を阻害しているのか、そのキーワードに引っ掛けながら問題点を洗い出します。

つまり、「問題 = 持続可能性の阻害要因の存在」なわけです。
問題を問題点に分解すると、

  • Q(品質) :熟練技能者の退職による製品品質の低下又は不安定
  • C(コスト):工程の自動化に向けた設備のイニシャル/ランニングコスト増大
  • D(納期) :不確実性(自然災害、貿易摩擦、パンデミック)に伴う原材料の供給網の寸断による納期遅れ
  • S(安全性):輸送機器の軽量化に伴う設計変更が安全性低下につながる懸念
  • E(環境) :金型の長寿命化を狙ったレアメタル添加が資源/エネルギー問題に及ぼす影響

などが挙げられるでしょう。
いずれも、広い意味で持続可能性に関わる要素を含んでいます。

上記のように、QCD(+SE)の視点を常に持っておくことで3つ問題点とそこから浮かび上がる課題を抽出できます。
繰り返しになりますが、課題は問題の語尾を変えるだけです。

例えば、
問題が「熟練技能者の退職による製品品質の低下」だとすれば、
課題は「熟練技能者の退職による製品品質の低下を”防止すること”」になります。

もう少し前向きな表現をするならば「熟練技能者に依存しない(属人化しない)製造技術の確立」でもいいでしょう。

この辺は見出しのつけ方として、いくつか練習するとすぐに言い換えの技術は身に付きます。
もう一つ、4Mの視点も紹介します。

「4M」の視点
4Mはその名の通り、以下の4つのMを表します。

  • Man(人)
  • Machine(機械/設備)
  • Material(材料)
  • Method(方法)

です。
よく、製品の不具合が生じた際などに4Mの視点で原因究明を行ったりします。

  • Man(人)    :作業者が変わってないか
  • Machine(機械) :加工機や洗浄機を変えていないか、メンテナンスや型交換などを行っていないか
  • Material(材料) :素材のロットやメーカーを変更していないか
  • Method(方法)  :製造方法・条件、外注先などを変更していないか

このようなイメージで分析を行います。
これをそのまま、問題点の抽出やリスクの洗い出しに応用するわけです。

以上のように「QCD(+SE)もしくは4Mの視点」は技術士論文にそのまま適用できることはもちろん、皆さんの業務にも応用可能です。
汎用性抜群ですので、ぜひ身に着けてしまいましょう。

PREP法

PREP法とは、論理的で分かりやすい文章展開を行う方法です。
PREPとはそれぞれ以下の頭文字を指します。

P:Point(結論、要点)
R:Reason(理由、背景)
E:Example(具体例)
P:Point(結論、まとめ)

上記の順番で主張を展開すると端的かつ分かりやすい、読み手に配慮した文章構成になります。
文章を読んだり話を聞く中で、「結論が見えない、何が言いたいのかわからない」場面に出くわすことってありますよね。
理由や具体例などを一生懸命説明されて、本筋に行く前に読み手、聞き手の集中力が途切れてしまうパターンです。

何度も聞き返したり、結論から先に教えてください、などとついつい言ってしまいますよね。
ですので、まず理由や具体例を示したくなる気持ちをぐっと押さえて、結論を頭出しします。

そうすると、当然読み手は「なんでなんで?」という気持ちになりますので、その疑問を引き出してから理由の説明に入る。
相手が理解したところで、例えばこんな方法があります、と具体例、具体策を示すことで、一気に納得感が増します。

そこで最後に、結論を改めて示すことで、非常に説得力を持った主張ができるという流れです。
当たり前のようですが、意識しないと身に付きませんので、この「PREP法」是非覚えましょう。
このままだと、技術士論文の実践で使いづらいので、下記のように課題と解決策に分けて使い方を解説します。

PREP法を使った”課題”の抽出
課題の抽出には、P,R,E,Pにそれぞれ下記のような意味を持たせます。

  • P:見出しで課題を頭出しする
  • R:その課題を設定した理由(=問題点)を述べる
  • E:解決策への方向性を示す
  • P:再度、課題を明示し締めくくる

このような流れです。
例えば、先ほどの例を元に具体的に課題を論述してみましょう。

Ⅰ 次の2問題(Ⅰ-1, Ⅰ-2)のうち1問題を選び、解答せよ。(Ⅰ-2は省略)

Ⅰ-1 国連が2015年に採択したSDGs・・・(省略)
産業界にも、SDGsの理念に沿った事業展開が求められる。
上記の点を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)金属材料を製造し、製品に加工、供給するバリューチェーンを通して持続的社会の実現に貢献していく上で、技術者としての立場で多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

に対して、下記のように1つ課題設定の例を示します。

  • P:熟練技能者の技能伝承(見出し)
  • R:自動化されていない加工工程は技能が属人化しており、労働人口減少により技能系労働者の担い手が不足している
    技能の担い手不足は、事業や技術の持続可能性の観点から問題である。
  • E:AIやIoTなどのデジタル技術を活用することで熟練技能者の暗黙知を形式知化に有効である
  • P:個人の技能に依存しない熟練技能者の技能伝承が課題である

のようにまとめられます。
技能伝承という課題、つまり結論を見出しで頭出しし、その課題を設定した理由・背景を述べ、具体例を示し、最後に結論で締めくくるという流れに沿っています。

次に、上記の流れを受けて解決策の提案例を示します。
解決策の提案におけるPREPそれぞれの役割は以下の通りです。

PREP法を使った”解決策”の提示
解決策の提示には、P,R,E,Pにそれぞれ下記のような意味を持たせます。

  • P:見出しで具体的な解決策の要点を頭出しする
  • R:その解決策が有効な理由(効果)を示す
  • E:具体的な解決策や応用例を示す
  • P:再度、解決策を明示し締めくくる

上記のように、解決策の提案におけるPREPの役割を割り当てます。
特に解決策において重要なのは、R(Reson)のところで、しっかりと「効果」を挙げることです。

ただ言いっぱなしの解決策は説得力に欠けます。
どの様な点において有効であるのか、その効果を明示すると読み手は安心してその解決策を支持できます。
これらの点を踏まえて下記のように、先ほどの課題からの流れで、解決策の例を示します。

  • P:デジタル技術の活用(見出し)
  • R:昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の発展により、AI・IoT・ロボティクスなどのデジタル技術が各方面で応用されている。技能者のスキルをビックデータ化することで脱技能化と高効率化が期待できる。
  • E:製品の加工や成型の際に金型に各種センサーを取りつけて製造状況を見える化するIoT技術や検査工程などで画像認識により合否を判定するAI技術など応用範囲は広い。
  • P:デジタル技術活用により形式知化された技能伝承が可能である

のようにまとめられます。
課題設定で、問題解決の方向性を絞ったうえで、上記のような具体的解決策に落とし込む流れがつかめますね。
PREP法により、無駄なく、かつ必要な説明を順序だてて説明することが可能になります。
文字数に限りがある中で、試験官に効果的に主張を伝えなければならない技術士二次試験筆記試験では打って付けの文章構成ですので是非身に付けてください。

ロジカル接続詞

ロジカル接続詞とは何でしょう。
一言で言うと、「前後関係が明瞭になる接続詞」を指します。
前後関係とは、順接なのか逆接なのかといった関係になります。

適切な接続詞を使用しないと、これから述べようとしていることが、前に述べたことを肯定しているのか否定しているのか分からない、つまり筆者の主張が読み手に誤って伝わる可能性があります。

使用を避けることが望ましい接続詞として代表的なものに「不明瞭なAND接続詞」があります。
「~し、~り、~て、~が、」
がそれに該当します。
不明瞭なAND接続詞を使うとどんな文章になるか、例を示しましょう。

ex.1)『材料Xに対して行った処理Aで強度が向上”し”、処理Bでは強度が低下した』

この文における”し”は順接でしょうか、逆接でしょうか、どちらでもないのでしょうか。
少なくともこの文だけからは判断ができず、前後の文脈から判断せざるを得ません。
それも悪くはありませんが、読み手の負担を減らす観点からは好ましくないでしょう。

続いてほかの例も見てみましょう。

ex.2)『材料Xに対して行った処理Aで強度が向上した”が”、処理Bでも強度が低下した』

この文における”が”は筆者のどの様な意図があるのでしょう。
逆接のような気がしなくもありませんが、順接のようにも取れます。
下手をしたら前後の文脈からすらも判断できないかもしれませんね。
特に、「~が、」は要注意です。
極力使わない方がいいでしょう。

上記を踏まえて、前後関係が明確な「ロジカル接続詞」を下記の通りまとめます。

前後関係がはっきりする「ロジカル接続詞」の例
・原因と結果: ~の結果、(because, so A that B)
・対照と対比: ~である一方、(while, where)
・目的   : ~するために、(in other that)
・条件   : もし~ならば、(if)
・時間   : ~する時に、~する前/後に、(when, before/ after)

上記のような接続詞がロジカル接続詞です。
接続詞の中に、前後間関係を示すニュアンスがはっきりと含まれているのが分かりますね。

コツとしては()で示したように、英語であればこの単語、という風に置き換えがしやすいものは日本語でもはっきりしたニュアンスとして伝わりやすいです。

当然と言えば当然ですよね。
他の言語に翻訳するということは、意味がはっきりしていないとできないことです。
読み手の読解力や前後の文脈に頼らないロジカル接続詞を活用して前後関係の明瞭な文章作成を心掛けてください。

ここでやや脱線しますので別記事で、接続詞の持つパワーを紹介します。

【心理学】接続(助)詞の持つパワー|悪用厳禁!
自身の言葉に説得力を持たせたい、より簡単に人を誘導したい、そんな風にたことがあると思います。そんな時、話し手は"何"を言うかに注力しがちですが、実は"どう"言うか、つまりWhatではなくHowが重要だったりします。そこにフォーカスした悪用厳禁のテクニックを解説した記事です。

興味のある方は見てください。

断定して言い切る

技術士論文において解決策を提案する際は断定して言い切りましょう。
技術士二次試験筆記試験のそもそもの目的を考えれば当然でしょう。

技術士としてのコンピテンシーを備えているか否かを確認するため試験です。
断定した表現からは自信と責任を感じます
当然ながら、自信と責任を持った人に仕事を依頼したいですし、技術士にもなってほしいわけです。

業務報告書や研究論文とは異なります。
業務報告書や研究論文は客観的な事実やエビデンスがないこと以外は断言できません。
主張の信ぴょう性を裏付けるデータに乏しい場合は、
「~と考えられる」「~と示唆される」
といった表現をし、断定を避ける場合があるでしょう。
もちろん、エビデンスに乏しく個人的見解に留まる場合はそのような表現が適切です。

しかし、技術士試験においては弱腰な表現は不要です。
あくまで試験ですから、筆記試験の論文を読むのは試験官のみです。
公に出回ることもなければ、他の情報ソースと照らし合わせて真偽を問うようなものでもありません。

そもそも、受験者のオリジナルの考えを問う前提の試験なわけですから、責任を回避するような弱腰な言い回しは避けましょう。
特に注意したいのが、「解決策の効果」を説明するところです。
課題に対する解決策を述べる際は、受験者オリジナルの策を提案するケースもあるでしょうし、実証したこともない内容で提案するかもしれません。
そのこと自体は全く問題ではなく、むしろその道の専門家であれば誰でも思いつく常識的な解決策は高評価につながりにくいです。

オリジナル故に自信がなくても、解決策の効果は断言しましょう。

「~という効果が期待できる」
「~のような効果がある」

という語尾で大丈夫です。

もしかすると、口頭試験で筆記試験の記載内容について問われるかもしれません。
「断言されてますけど、これは本当に効果があるのでしょうか」
などと聞かれることはまずないでしょう。
ただ、質問対策として、そのような提案に至った背景や似たような事例がないかなどについては補足できる程度に準備すると良いでしょう。

いずれにせよ、筆記試験の論文においては、
「技術士、つまりプロフェッショナルになりきって自信をもって断言する」
ように心がけましょう。

図を入れる(特にⅡー1問題)

筆記試験においては、図の挿入も積極的に検討しましょう。
まず、そもそも
「図なんて入れていいの?」
と思いますよね。
答案用紙として配られるのは、600字詰原稿用紙ですから、通常であれば文字によって記述すると思って当たり前です。
そこで、朗報です!

技術士二次試験の筆記試験では、図表を用いてもいいんです

私も、受験する前情報としてそのことは知っていました。
でも私にはまったく朗報ではありませんでした。

何故なら、私は絵やスケッチが大の苦手だからです。
仕事柄、どうしても図を描くことが必要な場面がありますが、自分の図の下手さに嫌気がさすほどでした。
二次元的に丸や四角を描くのも下手なのはもちろん、三次元的な表現となるともはや何を描いているのか分からない状態です。
犬も猫もネズミも、私が描くとすべて同じ動物にしか見えません。
いや、動物にすら見えているか自信がありません。(お化けかなんかにしか見えないかもしれません)

そんな私なので、最初からから論文に図表を入れることは諦めており、文章のみで勝負することを決め、スケッチ等の練習は一切しないまま本番を迎えました。
ですが、本番の問題文を見て後悔しました。
後悔したのは選択科目Ⅱー1を見た時です。
選択科目Ⅱー1はⅡー1-1~Ⅱー1-4の4つの選択肢から1つ選んで回答するというものでした。
私は金属部門の選択科目は金属加工を選択したので受験した際は、塑性加工、鋳造、溶接、粉末冶金の4つからの選択でした。
受験勉強では、鋳造か溶接のみに絞って対策していたため、必然的に2択まで絞られました。

ここで、いずれも対策の甲斐があり何とか解答可能という手応えを感じていました。
ただ、いずれを選択した場合も明らかに図表を用いた方が説明がしやすく、分かりやすいと感じました。
そして、ぼんやりですが頭の中に挿入すべき図のイメージが浮かんでいました。

そこで、図表を入れて解答すべきか、文章のみで解答すべきか試験中に悩みました。
私は賭けに出ました。
“図を入れる”ことにしたのです。

溶接の熱影響部の機械的性質と割れに関する問いだったので、金属組織の模式的なスケッチと硬さ分布を示す抽象的なグラフを対応させる図を入れたのです。
何とか図とグラフを書き入れて、それに対する説明を文章で補足した論文を作成しました。

結果は何とかA判定だったものの、図を入れるかどうかで悩んだ時間、練習をしていなかったので何回も書き直した時間、それらの時間をロスしたことで他の設問の解答時間が短くなってしまいました。

そればかりか、スケッチの出来栄えもおそらく酷いものだったと思います。
恐らく、文章で何とかフォローできていたので評価してもらえたのかなと思います。
結果オーライではありましたが、より合格を確実なものにするために

比較的シンプルな知識問題である選択科目Ⅱー1については基本的に図表を入れて解答する

と心に決めて対策することを強くお勧めします。
スケッチやグラフの手書きを普段から意識して行うことで、対象物のディテールを詳細に把握する観察眼が自ずと鍛えられますし、グラフを描こうとすると、必然的に現象の傾向を把握する洞察力も磨かれます

そしてシンプルに絵がうまくなります。

人は目から入ってくる視覚的情報が五感の中の8~9割と言われます。
その視覚に直接訴えかける絵や図表を駆使しない手はないですよね。

それに、恐らく慣れてくると文章を構成するより図表を描く方が速くなると思います。
そうなると、選択科目Ⅱー1に割く時間が短縮されるため、他の設問に十分に時間が割けるというおまけもついてきます。

更に、頭の中身をサラっと図表で表現できるスキルが身に付けば、普段の業務にも活きること間違いなしです。
何かとメリットが多い図表を用いた論文作成にぜひ挑戦してほしいと思います。

デザイン思考(ダブルダイヤモンド)の骨子立への応用

筆記試験では、いきなり原稿用紙に書き始めるのではなく、問題用紙の余白を活用し骨子を作成を先に始める、ということはこの記事の第3章で説明しています。
骨子は論文の骨組みになります。
骨組みをしっかりさせることで、原稿用紙上での論文の記述がとても楽になります。

逆に、骨子がない状態で原稿用紙を埋めようとすると、必要な要点が論文中に盛り込めなかったり、順番が狂ってしまったり、分量の大幅な過不足が生じます。
骨子作りは主に、

  • 各設問内容に応じた見出し
  • 各セクションで述べたい主張となるキーワード

を並べるだけでOKです。
問題を読む時間を含めて20~30分くらいで骨子をまとめらるよう過去問題や予想問題から練習しましょう。
その骨子をまとめる際に活用したいのが、デザイン思考の1つであるダブルダイヤモンドというフレームワークです。

デザイン思考とは、課題解決のプロセスをフレームワーク化したものです。
デザインはもともと建築、服飾、美術、広告などの分野における設計やクリエイティブな表現のことを指します。
そのデザインを活用する場面を広げて、デザイナー的思考を取り入れるプロセスがデザイン思考ということです。
デザイン思考はアメリカのデザインコンサルティング会社のIDEOが提唱した問題解決プロセスです。
端的には「ユーザーの本質的なニーズを見つけ、イノベーションを起こすプロセス」です。

また、米国のグラフィックデザイナー、計算科学者、作家でもあるジョン・マエダ氏は「デザインは3つに分けて考えるえるべき」と述べています。

  • 古典的なデザイン(いわゆる古来から一般的なデザイン)
  • ビジネスとしてのデザイン
  • テクノロジーとしてのデザイン

です。
そして、「ビジネスとしてのデザイン=デザイン思考」と指摘しています。
ビジネスの世界ではマーケティングや商品開発をスピーディーに行う手法として活用されています。

ここでは、そのような背景を持つデザイン思考の中でもダブルダイヤモンドについて解説します。

【デザイン思考のダブルダイアモンド】

ダブルダイヤモンドとは、2005年に英国政府のデザイン振興機関であるデザインカウンシルによって提唱されたものです。
産業デザイン、アプリ開発、社会問題全般など様々な場面で活用されるフレームワークです。
ダブルダイヤモンドは、
「問題を見つける」
「解決策を見つける」

という2つの大きなダイヤモンドから構成されます。
各々のダイヤモンドは「発散」と「収束」という2つの反復ステージからなります。
1つ目の「問題を見つける」は「探索(Discover)」(発散)と「定義(Difine)」(収束)
2つ目の「解決策を見つける」は「展開(Develop)」(発散)と「提唱(Deliver)」(収束)
からなります。
つまり「Double Diamond = Discover + Define + Develop + Deliver」
もっと言うと、「DD=DDDD」
というDづくしのフレームワークです。
各段階について、下記に解説します。

  • 探索(Discover)
  • 解決すべき課題に対する根本的な問題を発見するため、問題をリストアップする「発散」の段階

  • 定義(Define)
  • 探索段階でリストアップされた問題のうち、解決すべき問題を絞り込む「収束」の段階=解決すべき問題の決定。

  • 展開(Develop)
  • 定義段階でリストアップされた問題に対して、解決策をリストアップする「発散」の段階

  • 提供(Deliver)

展開段階でリストアップされた解決策を絞り込んで提案する「収束」の段階。課題に対する解決策を決定する。

上記のように1回目の発散と収束で解決すべき問題を適切に定め、2回目の発散と収束で問題に対する解決策を適切に定めることができます。
企業活動において新規分野への参入や商品開発など様々なシーンでプロジェクトを進める上で活用できるデザイン思考プロセスです。

このダブルダイヤモンドをどのように技術士論文への活用するかについて解説します。
ダブルダイヤモンドは3枚問題(必須科目Ⅰと選択科目Ⅲ)で活用します。
発散と収束を抽象度という視点で考えます。
発散は抽象度が高い思考状態、収束は抽象度低い(具体性が高い)思考状態です。
それを踏まえたうえで、以下のように考えます。

【3枚問題対策としての「クアドラプルダイアモンド」

0:ダイアモンドの思考に入る前準備として、問題文の与条件を捉える。
※環境問題なのか、人口減少問題なのか、生産性向上の問題なのか、大枠を外さないよう問題の意図から記述内容の制約事項を確認する1つ目のダイアモンド「課題抽出」

  • 1-1 発散(抽象度高):問題文を森として捉える
  • 1-1 収束(抽象度低):問題文から読み取れる、解決すべき問題から問題点を抽出し課題を設定する

2つ目のダイアモンド「解決策の提案」

  • 2-1 発散(抽象度高):設定した課題のうち最重要課題について解決策を複数検討する
  • 2-2 収束(抽象度低):複数ある解決策から3つ程度ピックアップする

3つ目のダイアモンド「共通するリスク」
※筆記試験の3枚問題についてはダブルではなく「クアドラプルダイアモンド」で考える

  • 3-1 発散(抽象度高):3つほど提案した解決策にそれぞれに潜むリスクを複数検討する
  • 3-2 収束(抽象度低):複数検討したリスクのうち各解決策に共通するものを「共通するリスク」とする

4つ目のダイアモンド「リスクの対策の提案」

  • 4-1 発散(抽象度高):共通するリスクの根本的問題点を複数検討する
  • 4-1 収束(抽象度低):洗い出されたリスクの問題点に対する対策を提案する

※ここで挙げる対策は複数である必要はない。残りの文字数が少なければ1つでも構わない。

いかがでしょうか。
上記のステップでデザイン思考であるダブルダイアモンドを3枚問題へ応用しています。
ダイアモンドが4つですので「クアドラプルダイアモンド」と命名します。
ダブルダイアモンドが2つなので”ダブルダブル”ダイアモンドでもいいのですが、”クアドラプル”ダイアモンドの方が格好いいのでそうします。
ポイントは以下の2点です。
・発想力や量を問われる場面では「発散」し抽象度を高め俯瞰的な見方をする
・条件により的確に合わせこみ、筋道を立てて洗練させる場面では「収束」し抽象度を下げる

当たり前のようですが、意識していないとできませんので、論文作成、特に骨子作成の際に取り入れて練習してください。

まとめ

いかがだったでしょうか。
本記事は小手先だけのテクニックではない文章術について紹介しました。
技術士二次試験の筆記試験はもとより、口頭試験や普段の業務においてものまま応用できるスキルです。

技術士を取得して見える世界が変わったと、多くの合格者が感じている要因の一つが、ここで紹介したスキルに集約されています。
そのようなこともあり、熱量を込めた記事になっています。

何度も見返して、自身に取り込んでください。

ここでさらっとおさらい!

1.はじめに|技術士試験二次試験筆記試験にテクニックは存在するのか

技術士二次試験の筆記試験に特化した小手先だけのテクニックのようなものは「ない」と思って臨みましょう!
汎用性もあり一生ものと言ってもいい文章術・スキルを身に付けるつもりで対策するのが得策です。

2.筆記試験共通の留意点
 2-1.字数制限
 「8割埋める。理想は最終行まで。でもはみ出さない!」
 これを徹底しましょう。

 2-2.配点と評価
 筆記試験は6割以上の点数で合格(A評価)
 試験官の主観によるところは否めないので、模擬試験で7割以上のアベレージを!

3.本番で焦らないための論文作成手順
原稿用紙にいきなり書き始めるのはNG!
5Step論述法に沿ってロスなくリスクなく書き上げましょう。

4.体裁を整え印象をアップさせるルール
同じ内容の文章でも、見た目が大事!
読み手を意識した作法を守りましょう。

5.知って得する戦術

 5-1.言葉の定義をはっきりさせる|問題、課題、解決策、リスク
 意外と間違って使ってる言葉ってあります。
 技術士試験に限らずビジネスシーンでもよく遣う言葉の意味を再確認しましょう。

 5-2.クリティカルシンキング~問題・課題・リスクの抽出に役立つ~
 クリティカルシンキングは、批判的思考。
 良い意味で疑問を持ち「なぜ?」と深堀りすることで本質に辿り着きます。

 5-3.「課題」は”多角的”視点で!
 事象に対する見方は人によって案外偏っています。
 QCD(+SE)や4Mなど、自分なりに視野を広げる視点を持っておきましょう。

 5-4.PREP法
 冗長的・回りくどい説明は、聞き手に負担がかかるばかりか分かりづらい!
 結論を頭出しし、補足説明を適宜付け加えるPREP法をぜひ身につけましょう。

 5-5.ロジカル接続詞
 接続詞の使い方ひとつで意味が全く変わったり、伝わらなかったりします!
 接続詞の持つ驚異的な力を認識し、用法には十分注意して意図のはっきりした接続詞を遣いましょう。

 5-6.断定して言い切る
 弱腰な言い回しでは自身・誠意が感じられません!
 技術士にはプロフェッショナルとしての姿勢が求められます。

 5-7.図を入れる(特にⅡー1問題)
 技術士二次試験筆記試験では、原稿用紙への図の挿入はOK!
 ビジュアルに訴える論文は好印象間違いなしです。

 5-8.デザイン思考(ダブルダイヤモンド)の骨子立への応用
 発散と収束のフレームワークは、まさに3枚問題にそのまま応用可能!
 広い視野での課題抽出や、鋭い視点での解決策提案につながります。

以上、まとめ完了!!

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