- 質問の大まかな分類とコンピテンシー
- 具体的な質問例に対する考え方と回答例
- 「あなたの業務経歴/業務内容の詳細について説明してください」
- 「筆記試験で○○と記述されていますが・・・」
- 「3義務2責務について説明してください」
- 「技術士倫理綱領について説明してください」
- 「技術者倫理について説明してください」
- 「反倫理事例について思いつくことなどありますか」
- 「技術士倫理綱領の中でもっとも重要なものは?そしてその理由は?」
- 「円滑なコミュニケーションにどような工夫をしていますか?」
- 「リーダーシップを発揮した経験を教えて下さい」
- 「業務の評価をどのように行っていますか」
- 「マネジメントした経験を教えてください」
- 「普段どのような継続研鑽をしていますか」
- 「技術士CPDについて知っていることを教えてください」
- 「他国の技術士制度について知っていることを教えてください」
- 「技術士試験を受験した動機は何ですか」
- 「技術士としての今後の抱負を教えてください」
- 参考書籍
質問の大まかな分類とコンピテンシー
こちらの記事
で紹介した口頭試験の留意点を押さえたうえで、想定問答のを作成していきましょう。
口頭試験の質問内容は大きく、
- 業務経歴に関すること
- 筆記試験に関すること
- コンピテンシーに関すること
に分けれらます。
さらに、コンピテンシーに関することは
- コミュニケーション
- リーダーシップ
- 評価
- マネジメント
- 技術者倫理
- 継続研鑽
について採点されます。
各コンピテンシーをどのように業務の中で発揮しているかを問うものや、コンピテンシーに関連する知識や考え方をに関する質問などがなされます。
いずれにせよ、試験官は限られた時間の中でコンピテンシーを審査するのに十分な情報が欲しいわけです。
意図のない無駄な質問はありません。
具体的な想定問答をストックして対策しましょう。
具体的な質問例に対する考え方と回答例
それでは具体的な質問を示したうえで、どのように考え、回答すれば良いか見ていきましょう。
できる限り回答例として示せる質問に対しては例を示しております。
質問の内容によってはその性質上、どうしてもご自身で考えて頂かないといけないものもあります。
そのような質問については考え方やそのヒントについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね!
「あなたの業務経歴/業務内容の詳細について説明してください」
これは、ほぼ必須で聞かれるといってもいいでしょう。
この対策としては、業務経歴と業務内容の詳細を暗唱してしまいしょう。
ご自身の簡単な略歴と、代表作であるご自身で取り組んだ業務の詳細であれば難なく言えると思います。
難なく言えるかとは思いますが、それだけに必要以上に詳しく述べすぎたり、専門用語ばかりで分かりづらかったりという懸念があります。
ですので、おすすすめは
「業務経歴の紹介1分、3分、5分バージョン」
の3パターンを用意しておくということです。
質問されるときに、「3分くらいでお願いします」などと時間指定されることもあれば、「手短にお願いいたします。」などと抽象的に条件が付けられる場合もあります。
どのような要求にも臨機応変に対応できるよう、3パターンほど想定して原稿をつくってしまうのです。
私は、プレゼンするときなどあまり原稿は作らない派ですので、口頭試験対策でも原稿は作らず、箇条書きのメモだけ作成しましたのでそれでもOKです。
1分の場合はここまで、3分の場合はここまで、5分の場合はこれを加えて、といった具合です。
業務経歴や詳細の説明だけで5分以上というのは、まずあり得ないですし、そもそもあらゆるコンピテンシーを審査するうえでそんなに時間が割けませんので5分までで十分です。
メモを作成したら、ストップウォッチを片手に時間を測って練習しましょう。
私はこの練習だけで何回したでしょう。
試験の数か月前から朝2回、夜2回くらいを毎日欠かさず続けたので、相当な回数練習したと思います。
一回に割く時間は数分なので時間にしたら大したことはありませんが、毎日の習慣化していたのでその習慣の力は本番で効いたと思います。
業務経歴の説明は大抵試験の冒頭で求められますので、いい口頭試験のスタートダッシュを切るにも非常に大切ですね。
下記の記事で詳しく説明しますが、「初頭効果」といって心理学的にファーストインプレッションはとても重要です。
何度も練習しましょう。
「筆記試験で○○と記述されていますが・・・」
このように筆記試験の内容について問われることがあります。
これに対しては「再現論文作成 + 補足説明の準備」で備えましょう。
“再現論文“は”復元論文“などとも言まれます。
筆記試験の内容を忘れないうちに文字に起こしておくのです。
当然、時間とともに記憶は薄れるので、早めに再現論文を作成しましょう。
私は、試験当日と翌日に再現論文を作成しました。
筆記試験対策 文章術の記事で紹介しましたが、論文の骨子を作成してあるはずです。
論文の骨子が筆記試験後に持ち帰り可の問題用紙に書き込まれているでしょう。
その骨子を見ると大体の記憶が引っ張り出されるはずです。
また、文章形式で再現論文を作成する必要はありません。
論文骨子にキーワードや要点を肉付けする感じでも十分です。
要は、口頭試験時に筆記試験で記述した内容について質問されたときに答えられるようにネタを準備しておくのが目的です。
記述した内容の論点さえ押さえておけば大丈夫です。
再現論文を作成したら、論点で抜けている点や反論に対する回答も思いつく範囲で構いませんので補強しておきましょう。
具体的には課題設定やリスクに偏りがないか、解決策や対策に具体性に欠けていないかなど、多角的視点で自分の論文にツッコミを入れてみて下さい。
そのツッコミに対する返しを準備しておきましょう。
再現論文は必須科目Ⅰ、選択科目Ⅱ-1, Ⅱ-2、選択科目Ⅲ全てについて準備しましょう。
過去には3枚問題だけでいいといった時代もあったようですが、選択科目Ⅱについても聞かれるケースもあるようです。
再現論文とそのツッコミ作成は大した手間ではありませんので、全問分準備して口頭試験に備えましょう。
「3義務2責務について説明してください」
3義務2責務は下記の記事で紹介しましたので、詳しくはそちらを参照してください。
ここでも簡単に解説します。
3義務2責務とは技術士に課せられた義務と責務であり、その根拠は技術士法四十四条~四十七条にあります。
下記の通り、合計5つあります。
- 信用失墜行為の禁止(義務①)
- 秘密保持義務(義務②)
- 技術士の名称表示の義務(義務③)
- 公益確保の責務(責務①)
- 資質向上の責務(責務②)
まず、これをしっかり覚えておきましょう。
「技術士の3義務2責務を挙げてください」とシンプルに聞かれることもあれば、知っていることを前提に深堀するような質問もあるでしょう。
いずれにせよ、覚えておかないと話にならないので、3義務2責務はこれはしっかり覚えておきましょう。
「技術士倫理綱領について説明してください」
これは鉄板ということではありませんが、”倫理”については確実に質問されることです。
その時に”技術士倫理綱領“に関する知識・考え方・視点は間違いなくです役立つので、以下の技術士倫理綱領を覚えてしまいましょう。
日本技術士会のHPに載っています。
技術士は、科学技術が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して持続可能な社会の実現に貢献する。
技術士は、その使命を全うするため、技術士としての品位の向上に努め、技術の研鑚に励み、国際的な視野に立ってこの倫理綱領を遵守し、公正・誠実に行動する。
【基本綱領】
(公衆の利益の優先)
1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。
(持続可能性の確保)
2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。
(有能性の重視)
3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。
(真実性の確保)
4.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的でかつ事実に基づいた情報を用いて行う。
(公正かつ誠実な履行)
5.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。
(秘密の保持)
6.技術士は、業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他に漏らしたり、転用したりしない。
(信用の保持)
7.技術士は、品位を保持し、欺瞞的な行為、不当な報酬の授受等、信用を失うような行為をしない。
(相互の協力)
8.技術士は、相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力するように努める。
(法規の遵守等)
9.技術士は、業務の対象となる地域の法規を遵守し、文化的価値を尊重する。
(継続研鑚)
10.技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。
こんな感じです。
技術士倫理綱領の解説も日本技術士会のホームページに載ってますので、見てみて下さいね。
大きく【前文】 と 【基本綱領】の2つに分けられます。
メインは基本綱領になります。
ですが、【前文】は受験案内にも記載されています「技術者倫理」と重複する要素がけっこうあります。
一字一句でなくて構いませんので、前文の要点だけでも押さえておくことをおすすめします。
- 科学技術の影響力は絶大
- 社会の持続可能性
- 品位、公正、誠実さが大事
- 継続研鑽
です。
「技術者倫理」と照らし合わせながらどのような内容であるかぐらいは雰囲気を掴んでください。
次に、基本綱領についてです。
【基本綱領】の括弧()の中は丸暗記です。
その説明は丸暗記しなくて構いませんが、自分の言葉で説明できるようにはしましょう。
それが、その他の倫理に関する質問にそのまま応用できます。
括弧()の中の覚え方は人それぞれで構いませんが、私は
「公持有真公、秘信相法継」(こうじゆうしんこう、ひしんそうほうけい)
と10個を5+5に分けて、あとは頭文字をおまじないのように唱えて覚えました。
まるで呪文のようでもあり、
「こうじゆうしんこう、ひしんそうほうけい!」
と叫んだあとには、何かしらの光が出て技が繰り出されそうな雰囲気ですね。
そんなお遊び要素も取り入れながら楽しく覚えましょう。
「技術者倫理について説明してください」
これは、準備していないとテンパりそうですね。
でも焦る必要はありません。
答えは受験案内にあります。
まさにコンピテンシーとして問われている技術者倫理のことです。
それでは、受験案内に記載されている技術者倫理を見てみましょう。
【技術者倫理】
・業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,文化及び環
境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続性の確保に努め,
技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
・業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負う
こと。
これも丸暗記までは必要ありませんが、重要な要素があります。
以下の要素を抽出して覚えておきましょう。
- 公益の最優先
(公益=公衆の安全、健康、福利) - 社会の持続可能性の確保
(環境そして未来が大事) - 法令遵守
(守らないと犯罪です) - 説明責任
(アカウンタビリティ)
こんな感じです。
随分すっきり分かりやすくなりました。
技術者倫理に限りませんが、受験案内の表現などは非常に堅苦しく、理解しづらいです。
そして、筆記試験や口頭試験においては、その堅い表現なんて求めていないのです。
なんとも意地悪な感じですが、社会ってそんなもんですよね。
生真面目に難解な文章をそのまま覚えようとしないでくださいね。
他の勉強や読書法においても共通ですが、「自分の言葉に置き換えて理解する」ことを習慣づけましょう。
そうすることによって、劇的に説明力と記憶力が向上します。
技術者倫理と聞かれて、上記の4項目に即座に変換できるようになると上出来です。
「反倫理事例について思いつくことなどありますか」
きました、またしても倫理です。
もちろん倫理についてばかり聞かれるばかいではありませんが、倫理対策はしっかりしましょう。
この質問には大きく2つの意図があると分析しています。
- 社会問題として起こっている事例として理解と見識があるかの確認
- 受験者自身が経験した反倫理事例に対してどう対処し、どう考えたかの確認
もちろん、「世の中で起こっている事例の中で」「あなたが体験した中で」などと条件を示してくれる場合もあるでしょう。
どちらのケースに対しても答えを準備しておきましょう。
世の中の事例については3つほどストックを持っておくと安心です。
インターネットで調べるとすぐ出てきますのでここでは具体的な社名等は差し控えますが、例えば
- 某鉄鋼メーカーの試験データ改ざん
- 某自動車メーカーの燃費不正問題
- 某建設資材メーカーのデータ改ざん
などがあります。他にもいろいろあるかと思います。
ご自身の専門分野に近いところを中心に調べてみて下さい。
その際、以下のポイントを整理してノートなどにまとめておいてください。
- 反倫理の内容
- 不正が起こった背景
- 不正再発防止策
ex.)データ改ざん、隠蔽、捏造etc
ex.)組織体質、上層部からの圧力、目先の利益優先、不合理な独立採算のシステムetc.
ex.)倫理委員会の設置、倫理教育の拡充、チェックシステムの強化etc.
いくつか事例を調べてまとめていくと、各企業が取った対応策などに共通点がわかってきます。
それが見えてくると応用が利きますし、自身が反倫理事例に巻き込まれた際にもそのまま適用できたりします。
もちろん、倫理問題に正解はなく、「常にベターを考え続ける姿勢」がとても大事な問題ですので、取ってつけたようなコピーではいけません。
しかし、多くの反倫理事例を知っておくこと、そして背景や対応策について考えを巡らせてまとめておくことは口頭試験対策で武器になります。
この手の質問にも十分備えておきましょう。
「技術士倫理綱領の中でもっとも重要なものは?そしてその理由は?」
ストレートにこう聞かれることもあるかもしれませんし、ちょっと違った問われ方をするかもしれません。
いずれにせよ、この質問に対する答えを持っておくことは、倫理に関する様々な質問への応用が利きますので準備しておきましょう。
結論としては、この質問に絶対の正解はありません。
どれも非常に重要ですので、理由としてきちんと自分の考えを述べられれば何でも構いません。
ただ、もし迷うようであれば技術士倫理綱領の1番目
「公衆の利益の優先」
と答えておくと無難でしょう。
理由としては以下の通り。
- 「技術士倫理綱領」の(公衆の利益の優先)の説明で「1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を”最優先”に考慮する。」と、”最優先”と明記されているから
- 「技術者倫理」の説明でも「公衆の安全,健康及び福利を”最優先”に考慮した上で・・・」と公衆の利益に相当する部分を”最優先”と明記している
- 「3義務2責務」の中にも「公益確保の責務」が掲げられており、これは(公衆の利益の優先)に相当すると考えられる
- 極論的を言ってしまえば、他のどの技術士倫理綱領が果たされたとしても、「公衆の利益」を犠牲にしたのでは高度な知識や技術を有する技術士の仕事であっても価値があるとは言えない。公衆の利益は全ての土台であり、まさにそれを確保するために技術士がいる。
このようなことが、説明できれば十分でしょう。
「円滑なコミュニケーションにどような工夫をしていますか?」
他のコンピテンシーも同様ですが、一般的な理解と技術士的コンピテンシーには意味にギャップがあります。
一般的には、コミュニケーションは会話ベースであることや外交的な印象があります。
技術士的コミュニケーションは何であったか、
まず、定義をしっかり確認しましょう。
詳しい解説こちらの記事でしていますのでそちらも参考にしてください。
【コミュニケーション】
定義(受験案内参照):
・業務履行上,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
・海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
でしたね。
後半の海外における・・・はまず気にしなくていいでしょう。
ポイントは、前半に3つあります。
「口頭や文書」「多様な関係者」「明確かつ効果的」
です。
この3つの要素をしっかり経験談として盛り込むことが重要です。
回答例としては以下の通り。
「顧客、同僚、上司など人によって前提知識や理解度が異なるので、そこを踏まえた言葉選びや説明ボリュームは重要と考えています。」
「分からないこと、分かりづらいことなどがないか、相手のフィードバックを得ながらの対話を意識しています。」
こんな回答が考えられるでしょう。
回答は人それぞれで構いません。
なかなか浮かばない場合は、具体的に場面を想像しましょう。
顧客と案件Aについて話している場面、同僚や上司に案件Bについて報告している時等々。
具体的場面を想像し、自分ならこうするな、あるいは聞き手としては話し手にこう説明してくれると分かりやすいな、など思いを巡らせると自然と回答が出てきますよ。
「リーダーシップを発揮した経験を教えて下さい」
リーダーシップも一般的イメージとコンピテンシー上の意味とのギャップがありますね。
一般的には、グイグイチームを引っ張り、決断力や行動力に溢れた姿が想像できます。
技術士的リーダーシップとは何でしたでしょうか。
定義を確認しましょう。
詳しい解説はこちらの記事でしていますのでそちらも参考にしてください。
【リーダーシップ】
定義(受験案内参照):
・業務遂行にあたり,明確なデザインと現場感覚を持ち,多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
・海外における業務に携わる際は,多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに,プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
でしたね。
こちらも後半の海外における・・・はまず気にせずいきましょう。
ポイントは、前半に2つあります。
「明確なデザインと現場感覚」
「多様な関係者との利害調整」
です。
この2つの要素を盛り込んだ経験や普段気を付けていることを述べればいいのです。
先ほど、触れたとおり一般的イメージとは違います。
実際にリーダーとしての役職である必要など一切ないですよ。
私は30代で合格しましたが、職場ではどちらかと言えば若手で指示を受けたりリーダーに報告したりする立場でした。
要は「主体的」であればいいのです。
上記のポイントをしっかり押さえておけば役職や年齢などは関係ありません。
心配せず対策しましょう。
以下に、回答例を示します。
現場における歩留まり改善が目的でしたので、まずは現場に何度も足を運びました。
机上の空論ではいくら優れた技術的提案でも実用性が乏しいという考えから現場の作業者によく話を聞きました。
その上で解決策Bを提案しました。
他の業務と並行しながら効率よくデータを取得する必要があったため、チームを組み試料作成や分析・試験などそれぞれ得意なメンバーに加わってもらいました。
各メンバーの空き時間を考慮しながらのスケジュール管理や進捗報告、ミーティングなどこまめに行うことで多角的な視点を取り入れながら研究内容をまとめました。」
いたって普通と言えば普通ですよね。
まず、第一段階の解答としてはこのような普通の解答で十分です。
普通ですが、ポイントである「明確なデザインと現場感覚」「多様な関係者との利害調整」がきちんと盛り込まれています。
場合によっては、メンバー間の意見の食い違いなどに対する対応方法など深堀されるかもしれません。
そのような質問にもあまり構えすぎず、実際に行ったことを素直に答えて基本的に問題ないかと思います。
ただ、素直と馬鹿正直は違います。
素直というのは社会常識として素直ということ、つまり特別なひねりはいらないということです。
馬鹿正直とは、現実の生々しい人間関係などをあげつらってしまうことです。
例えば、
「私の意見は一部の同僚から理解されなかったので、そのような人は無視して進めました」
というのは現実にはありうるでしょう。
当然致し方ない場合もあります。
ですが、口頭試験の場においては不適切なのはわかりますね。
「何度も説得して理解を得ました」
「説明の仕方を工夫しながら妥協点を見出しました」
など、難しい場面でも諦めない真摯な姿勢が感じ取れる、そんな回答を心掛けましょう。
「業務の評価をどのように行っていますか」
これは技術士のコンピテンシーのうち「評価」能力を問うものです。
口頭試験を受ける皆さんは筆記試験対策もしっかりした上で合格されたわけですから大丈夫だと思いますが、ここでも「評価」について先走った解釈は禁物です。
これは
「受験者がどう評価されているか」
「業務そのものがどう評価されたか」
ということを問うものではありません。
「受験者の”評価”能力を問う」
を間接的に知るために、
「“受験者が”業務をどう評価しているか」
を聞いています。
そこを押さえたうえで、今一度「技術士的評価能力」を定義からおさらいしましょう。
【評価】
定義(受験案内参照):
・業務遂行上の各段階における結果,最終的に得られる成果やその波及効果を評価し,次段階や別の業務の改善に資すること。
でしたね。
ポイントは以下2つです。
「結果・成果・波及効果の評価」
「次段階・別の業務への改善」
です。
1つ目のポイントは最終的な成果のみならず中間評価などもこまめに行って計画性を持って業務行っていいるか、成果の先にある波及効果にも目を向け広い視野で物事を捉えているかなどを意味しています。
2つ目のポイントは評価しっぱなしではなく、次にその反省を生かしているかという改善意識を問うています。
これらを踏まえた上で、回答例を示します。
軽微な計画の見直しや軌道修正などを行っております。
また、年度単位で他部署や所属長にもプレゼンしフィードバックを受けることでブラッシュアップを図っています。
有益な情報提供とディスカッション行うため、極力数値での定量的評価をこころがけております。
業務Aの成果によりコストが○○%削減されましたが、これは業務Bにも応用可能であることが分かりました。」
このように、有効な評価を行うための工夫点や具体的数字、波及効果の応用先などを示し、業務改善の姿勢が見えると好印象ですね。
「マネジメントした経験を教えてください」
これもなかかなストレートでありながら、唐突に聞かれると黙り込んでしまいそうな質問ですね。
マネジメントについては一般的理解とコンピテンシー上の定義とでさほどギャップはないかもしれませんが、念のため復習しましょう。
詳細はこちらの記事で解説していますのでそちらも参考にしてください。
【マネジメント】
定義(受験案内参照):
・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において,品質,コスト,納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項,又は成果物(製品,システム,施設,プロジェクト,サービス等)に係る要求事項の特性(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等)を満たすことを目的として,人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
でしたね。
上記の定義は一文で示されているものの、前半の「~を目的として、」までがやたら長いですね。
ここまではある意味当たり前のことが述べられています。
業務ですから、PDCAの各段階があり、QCDに関する顧客の要求事項があり、製品の特性にも要求事項があることは当然でしょう。
重要なポイントはその後です。
「人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること」
です。
人員・設備・金銭・情報等の資源、つまりリソースです。
よって、
「技術士的マネジメント = リソースの配分」
です。
どうでしょう、随分コンパクトになりましたね。
どのようにリソースを配分したか、そこを念頭に置いてマネジメント経験を述べればOKです。
リーダーシップと同様、マネジメントも役職や年齢は関係ないのです。
マネージャーである必要はないということです。
リソースを配分して業務を効率的に行うということは誰しもやっていますからね。
そこを踏まえた上で買い取例を示します。
案件ごとに顧客のQCDに関わる要求事項、各メンバーの業務の進行状況、設備の稼働状況などの情報を見える化して共有しています。
それらの情報をベースに案件ごとの優先度を決定し、リソース配分の最適化を図るよう努めています。」
どうでしょうか。
あくまで例なので抽象的にとどめている部分もあります。
このように、必要なポイントを盛り込んで回答できるといいですね。
「普段どのような継続研鑽をしていますか」
継続研鑽については、技術士として超重要でありながら筆記試験では問われないコンピテンシーです。
また、口頭試験で評価されるコンピテンシーとして明記されていることはもちろん、
受験者に直接的に「あなたは継続研鑽していますか」と問わないことにはなかなか回答を引き出しづらいコンピテンシーでもあるでしょう。
そのような理由から、これは必須で問われるといってもいいでしょう。
これは素直に一般的解釈として回答して問題ありませんが、念のため定義をおさらいしましょう。
詳しくは、下記の記事で解説していますのでそちらもご参照下さい。
【継続研鑽】
定義(受験案内参照)
・業務履行上必要な知見を深め,技術を修得し資質向上を図るように,十分な継続研さん(CPD)を行うこと
でしたね。
取り立ててポイントというものはありません。
日進月歩の科学技術に関するプロフェッショナルとして、また強い技術者倫理を兼ね備えた技術者として資質を向上させる不断の努力が必要ということですね。
当たり前ですが、継続研鑽は技術士になってから初めて行うべきものではないですよね。
「技術士を目指すあなたなら、もうすでに技術士に相応しい研鑽をしていることでしょう。
それの内容を教えてください。」
ということです。
あまり考えすぎず、素直にやっていることを答えるといいでしょう。
ただ、正直なところ技術士試験受験中の方であれば、日々の仕事と家庭生活に加えての受験対策だけで精一杯ですよね。
そうなると、「この技術士試験受験自体が自己研鑽です」と答えたくなると思います。
それはある意味当然といえば当然です。
他の受験者と少しでも差をつける意味でも”+α”が欲しいですね。
例えばこんなものが該当します。
- 学会誌、協会誌、業界誌の購読
- 学会や講演会の聴講/発表
- 資格取得
- 論文・図書の執筆
- ボランティア活動
- 職場内での勉強会の主催/参加
- その他自己学習
※具体的な誌名や最近関心のある記事なども併せて答えられるように
※発表の方がもちろん高評価ですが、聴講だけでも研鑽に当たります
※技術士以外でお持ちの場合は、ぜひアピールしましょう(ただし、業務関連であることが望ましい)
※ここまでやれると素晴らしいですね
※技術に関するものがあればアピールしましょう(子供向け科学教室など)
※勉強会や改善活動など本来業務以外で取り組んでいることなど
※例えば、業務関連の専門書を読むetc.
上記の中でいくつか実際に取り組まれているものがあると思います。
残念ながら技術者と呼ばれている人でも、ほぼ自己研鑽していない人も多く見かけます。
ですが、恐らく技術士を目指す人の多くは必然的に学会誌の購読や他の資格取得などが習慣化している傾向が強いと思います。
普段、あるいは技術士試験対策が本格化する以前でも構いませんので取り組んできたことを堂々とアピールしましょう。
「技術士CPDについて知っていることを教えてください」
これは間接的にではありますが、継続研鑽について問う内容です。
直接このように聞かれることはあまりないかもしれませんが、技術士CPDについて知っておくと間違いなく役立ちます。
知識としてしっかり持っておきましょう。
CPDがContinuing Professional Developmentの略であることは知っていますね。
日本語では継続研鑽と言っています。
日本技術士会の研修委員会が「技術士CPDガイドライン」というものを発行・改訂しています。
ホームページからダウンロードできますので、詳しくはそちらを参照してください。
ここではその要点をまとめておきます。
- CPDの定義
- CPDの範囲
- CPDの位置づけ
- 技術士CPDの目的
- 技術士CPDの基本
技術士自らの技術力、研究能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力向上のため、自分の能力を継続的に研鑽する活動
①能力を獲得する活動:講演会・講習会・研修会・見学会等への参加
②実務を通じた活動:表彰を受けた業務。特許取得
③社会貢献活動:公的な機関等の委員会委員、講演会講師、技術指導等
平成12年の技術士法改正により、技術士法第47条2に「技術士の資質向上と責務」として「技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他の資質の向上を図るよう努めなければならない。」が追加された。
これによって、技術士の資質向上を図るためのCPD(Continuing Professional Development)は、法律で義務と位置付けられた。
①技術者倫理の徹底
②科学技術の進歩への関与
③社会環境変化への対応
④技術者としての判断力の向上
①技術業務は新たな知見や技術を取り入れ、常に高い水準とすべき。
②継続的能力開発と、その能力証明に意義がある
③継続研鑽は、技術士個人の専門家としての資質向上に資する
④自己の責任において、資質向上に寄与したと判断できるものを継続研鑽の対象としている
∴何が継続研鑽となるかは、個人の現在の能力レベルや置かれている立場により異なる
⑤技術士が日常従事している業務、教職や資格指導としての講義など、それ自体は継続研鑽とは言えない
But, 業務に関連して実施した「専門家としての能力の向上」に資する調査研究活動等は、継続研鑽活動であるといえる。
まだまだ色々ありますが、このくらいにしましょう。
上記を参考にしながら、実際に技術士CPDガイドラインを一読して自分なりに重要そうなポイントをまとめておくといいかもしれません。
「他国の技術士制度について知っていることを教えてください」
これはまず聞かれないかもしれませんが、海外に目を向けることも非常に重要です。
海外を見るからこそ、日本が見えてくるという側面もあります。
実際に技術士になってからもそのような視点は非常に重要ですので、この機会に他国の技術士制度について調べてみて下さい。
各国において、関係法令関係など更新されることもありますのでここでは詳しく触れませんが、
- 国:欧米などの主要先進国、アジア諸国
- 項目:資格の名称、法律の有無、登録の有無、更新の有無、CPDに関する規定
上記について、国ごとに各項目をざっとまとめておくといいですね。
ちなみに日本は、2021年8月現在において
- 資格の名称:技術士(Professional Engineer(略称:PE))
- 法律の有無:有(技術士法)
- 登録の有無:有
- 更新の有無:無(ただし、更新を進める動きが進みつつある)
- CPDに関する規定:有
となります。
他国については自分なりに調べておきましょう。
「技術士試験を受験した動機は何ですか」
直接このように聞かれることもあれば、似たようなニュアンスの聞かれ方もあるでしょう。
動機は人それぞれですので素直に答えて問題ないですが、こんな答えはNGというものはあります。
例えば、「昇進昇級できる」、「手当てがつく」、「箔がつく」こんな感じの答えです。
もちろんそれが悪いと言っているわけではありません。
それが事実であるならば大いにモチベーションの1つにするべきです。
しかし、先ほどの答えに共通することは「外発的動機づけ」です。
お金やモノが手に入る、周囲からの評価が上がるといった”周りの環境”が要因となった動機付けです。
外発的動機づけは一時的には人に強く働きかけるものの持続的ではありません。
ですので、そのような人が技術士になっても科学技術を担うプロフェッショナルとしての活躍が期待できないわけです。
外発的動機づけ、つまり周囲の環境に訴えかけるような受験動機を挙げるのは避けましょう。
であれば、どんな動機が好まれるのでしょう。
「内発的動機づけ」です。
「自己の成長」や後輩や組織としての「他者の成長」につながるような動機です。
例えば、
「技術士となり他の技術士の方々とのネットワークを築き、質の高い人脈を形成したい」
「科学技術のプロフェッショナルとして、地域のボランティアなど今より活動の幅を広げたい」
「技術士となり後輩やこれから技術士を目指す技術者に指導をして人材育成をしたい」
などがあるでしょう。
このようなニュアンスで個々に答えを用意してください。
「技術士としての今後の抱負を教えてください」
これは、先ほどの受験動機とほぼ重なる質問です。
受験動機で先ほどのような内発的動機付け、自己成長である他者成長につながるような抱負を述べられればOKです。
要は、受験動機が自己成長や他者成長ということは「技術士になって○○したい」ということですよね。
ベクトルが将来に向いているわけです。
その「〇〇したい」というところをしっかりと熱意をもって伝えて下さい。
ところで、「今後の抱負」は何のコンピテンシーを聞かれているのでしょう。
はっきりとした答えはありませんが、「継続研鑽」の要素が強いと考えらえます。
技術士倫理綱領の10番目
(継続研鑚)
10.技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。
とありましたね。
技術士の継続研鑽の要素には、自身の力量と知識を高めるだけでなく、人材育成も期待されています。
そのような内容を今後の抱負として盛り込めると、コンピテンシーのアピールにもつながりますね。
想定される質問はいくらでも存在します。
更に思いつくものがあれば、更新して追加します。
いずれにしても、コンピテンシーを審査するのが目的になってきます。
そこを意識して対策しておくと、想定外の質問が来ても応用が利きます。
口頭試験は「謙虚さ」「誠実さ」を忘れずに対話を楽しむつもりで臨んでください。
参考書籍
技術士二次試験の口頭試験に関し、この記事の想定問答や、こちらの記事でも詳細に解説しています。
これらの対策を講じてもまだ不安が残るという方。
もっとやり切りたい方。
そんな方には下記の3つの書籍をオススメします。
著書名:技術士第二次試験「口頭試験」 受験必修ガイド 第6版
著者名:杉山正弘, 福田遵
口頭試験は、受験申込時に提出する業務経歴や業務内容の詳細といった書類とリンクしています。
受験申し込みの準備段階からしっかりフォローしてくれている1冊。
技術士試験を決めたなら真っ先に読んでほしいです!
著書名:口頭試験は直前対策が9割
著者名:森浩光
筆記試験の結果が出てから焦って口頭試験の準備を始める方。
短期決戦で一気に合格ラインまで持っていきたい方にオススメ。
不合格になってしまう理由や、事例なども豊富に紹介されていますよ!
著書名:面接官の心を操れ! 無敵の就職心理戦略
著者名:メンタリスト DaiGo
こちらは心理学的なアプローチから、面接に臨めばいいかを解説してくれている超実践的な本。
実は私が口頭試験で最も重宝したのはこの一冊。
就職面接も技術士試験の口頭試験も、結局は対面接官との対話であることは共通。
人が人を評価する以上そこには共通したセオリーやテクニックがあります。
そんな原点に立ち返って合格ラインまで一気に引き上げてくれる一冊です!
ばっちり対策して合格を掴み取りましょうね!!
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